「あと10メーター、5メーター、停止!!」 国内唯一“異色のスイッチバック”体験が胸アツすぎる列車とは?
鉄道旅の楽しさを味わえる区間の一つに、列車が進行方向を変えるスイッチバックがあります。なかでも新潟県の第三セクター鉄道、えちごトキめき鉄道の観光列車「えちごトキめきリゾート雪月花」での運転方法は“異色”でした。
スイッチバックで運転士はそのまま、でも入ってきたのは!
姨捨と同じように停車する列車だけがスイッチバックし、通過列車は本線をそのまま駆け抜けていくのが、えちごトキめき鉄道はねうまラインの二本木駅(新潟県上越市)です。
筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)は2026年3月、2両編成で真っ赤な外観のディーゼル車両ET122形1000番台「雪月花」で、この駅を訪れました。窓の横幅が2.3mと鉄道車両として国内最大級で、大きな窓から乗務員室を見渡せるためスイッチバックの様子も迫力満点で楽しめました。
列車は北陸新幹線と接続する上越妙高(上越市)を10時35分に出発後、進行方向右手の二本木駅付近を通り過ぎました。すると、左へ分岐した引き上げ線に入り、積雪で線路が埋まらないようにした“雪囲い”の中で運転士がブレーキをかけて停止。車内では「ただいまよりスイッチバックのため、列車の進行方向が変わります」との放送が流れました。
運転士は妙高高原側に向かって左側にある乗務員室の扉の窓を全開にしましたが、乗務員室から動く気配がありません。乗務員室に入ってきたアテンダントが乗務員室扉の窓から頭を出すと、運転士はマスコンハンドルを操作して20km/hでバックします。
駅のプラットホームの先端近くで、アテンダントが「あと60メーター」と伝えます。運転士がブレーキをかけながら「あと60メーター」と復唱すると、アテンダントは「あと40メーター」と続けます。運転士がブレーキを強め、アテンダントは「あと20メーター」「あと10メーター」「あと5メーター」と続けて「停止」の声とともに列車が止まりました。
この運転方法について、別のアテンダントが乗客にこう説明しました。
「『雪月花』ではデザイナーのこだわりにより運転席が中央寄りに造られているため、運転士が窓から後方確認することができません。そのため、アテンダントが代わりに窓から顔を出し、あと何メートル、あと何メートルと指示を出しながらバックしております」
「雪月花」のデザイナーは、イチバンセン一級建築士事務所代表取締役の川西康之氏です。川西氏は、日本国有鉄道時代に登場した電車117系を改造したJR西日本の長距離列車「ウエストエクスプレス銀河」、特急「やくも」(岡山―出雲市)の電車273系、ディーゼル車両キハ189系を改造した観光列車「はなあかり」なども手がけてきました。
普通に通常使われている電車ET127系の場合、運転席が「雪月花」とは異なり窓際にあります。このため、運転士は立ち上がって乗務員室扉の開けた窓から頭を出し、自分で停止位置までの距離を確認しながらワンハンドルマスコンを操作します。
他方で上り列車が二本木に入る際、反対側の乗務員室には運転士がいない状態なのは同じです。「雪月花」のアテンダントは「二本木駅側から見ると、誰もいない状態の列車が進入してくる不思議な体験ができます」と解説しました。





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