郵便も核兵器も運んだ!? 「空母の宅配便」が60年の任務に幕 後継機から読む米海軍の「戦い方の変化」とは

米海軍の艦上輸送機C-2「グレイハウンド」が、60年以上におよぶ任務を終えました。後継機はCMV-22Bですが、その交代は単なる機材更新ではなく、米海軍の戦術思想そのものの変化を象徴する出来事です。

後継機にCMV-22Bが採用された理由

 C-2は固定翼機で、高速(約600km/h)で長い航続距離(約2400km)、最大4.5tの積載量がありましたが、発艦にはカタパルト、着艦にはアレスティングワイヤーが必須で空母以外への輸送はできません。このことは、空母が艦隊への兵站ハブとなる「配送センター」の役割も担わなければならないことを意味します。空母が艦隊向け配送を一括して受け取り、ヘリコプターなどで各艦に「宅配する」イメージです。それが空母に負担を強いることになり、艦隊運用の制約にもなっていました。

 C-2の後継となったCMV-22Bは、輸送機としての性能だけを見れば、速度と積載量はC-2に及びません。しかしCMV-22Bが採用された理由は、輸送性能ではなく運用の柔軟性にあります。垂直離着陸が可能で、空母以外の艦艇や陸上基地にも直接アクセスできるのです。また、C-2では困難だった、艦上戦闘機F-35Cが搭載するF135エンジンの主要部であるパワーモジュールを搭載できることが大きなポイントです。

 もう一つ関係しているのが、海洋進出を目論む中国の台頭です。中国はアメリカ軍の接近を長射程兵器で阻止しつつ、作戦地域内では中・短射程兵器で行動の自由を奪おうという、いわゆる「A2AD(接近阻止・領域拒否)」作戦を進めています。特にアメリカ海軍の空母打撃群は中国にとっては大きな脅威で、DF-21DやDF-26といった弾道弾、長距離巡航対艦ミサイルによる攻撃手段、衛星・無人機による監視網などを着々と整備しています。

 そこでアメリカ海軍は、その対抗策として分散海上作戦(Distributed Maritime Operations:DMO)構想を進めています。艦艇を数百km以上の広範囲に分散させ、ネットワークと無人アセットを活用して戦闘力を発揮します。つまり、物理的には分散、情報的には集中という考え方です。

 そこで兵站も空母という一つの拠点に集約するのではなく、分散した各艦へ直接届ける方が効率的です。C-2は「空母に届ける配送便」しかできませんでしたが、CMV-22Bなら「各艦への個別宅配便」が可能で、DMO構想に対応できます。

 一方で不安要素もあります。2023年11月29日に日本の屋久島沖でアメリカ空軍CV-22Bが墜落した事故です。CMV-22BによるCODも影響を受けたとされますが、詳細は「セキュリティ上の理由」で明らかにされていません。ちなみに核兵器は、CMV-22Bで運ぶことは想定されていません。現在、海軍の核兵器運用は主に戦略弾道ミサイル原潜が担っており、空母打撃群は通常兵器を運用しています。

 C-2の退役は、一見すると旧式輸送機の世代交代という地味なニュースです。しかし、兵站の変化は戦い方の変化を意味します。一見地味な輸送機の世代交代――その裏側では、アメリカ海軍の戦い方そのものが大きく変わろうとしているのです。

【空母の宅配便】C-2と後継機CMV-22Bを見る(写真)

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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