フリーゲージトレイン導入見送り、どうなる長崎新幹線 鍵は佐賀県?

JR西日本に続き、JR九州もNO!

 冒頭で記したとおり、2017年6月、JR九州がフリーゲージトレイン導入の見送りを検討し、7月にも正式発表すると報じられました。また政府・与党も、この報道と2016年12月から現在までの試験結果を踏まえて、こちらも2017年7月にもフリーゲージトレイン導入の是非を判断するとも報じられました。長崎新幹線の、フリーゲージトレインによる2025年全線開業は見直しとなりそうです。

 フリーゲージトレイン導入に際しJR九州が消極的になる理由は、運行費用の問題です。フリーゲージトレインは台車の構造が複雑で、現在の新幹線車両より点検作業が増えます。また、車軸の耐久性の低さも露呈して、部品の交換頻度も高くなります。そのため、維持コストが通常の新幹線車両と比べ2.5倍から3倍になるおそれが出てきました。もちろん開発の遅れも問題です。リレー方式をいつまで続けるか見通しが立たず、運行に関して長期的な計画を立てられないからです。

 JR九州が2016年10月に株式を上場し、完全民営化したこともこの判断に結びついているといえるでしょう。国が主要株主であれば、国が開発するフリーゲージトレインを引き受ける義理もありました。しかし、民間の投資家が株主になったいま、経営状態は一層厳しくチェックされます。民間会社としては、従来の新幹線より製造費用も保守費用も高いうえに、実現性が不透明なものを導入するという経営判断はできません。

 JR九州は昨年12月ごろにも、フリーゲージトレインの保守費用について懸念を示していました。また、それより以前に、JR西日本もフリーゲージトレインに否定的でした。フリーゲージトレインは重量が大きく、営業最高速度の目標も250km/hです。JR西日本が運行する山陽新幹線は300km/hの列車が多いため、スピードが遅く、重量で線路に負担をかけるフリーゲージトレインについては乗り入れを認めないと表明していました。

 速度はともかく、重量についてはJR九州も同じ見解です。九州新幹線鹿児島ルートの直通には否定的。そこで、フリーゲージトレインを使った長崎新幹線は、博多~新鳥栖間についても在来線の鹿児島本線を走らせる計画になっています。この状態では、博多~長崎間で、現在の在来線特急と比較して約30分しか短縮できません。これでは長崎新幹線を造る意味があるか、という根本的な問題にもなってしまいます。博多駅から山陽新幹線に直通できれば、新大阪~鹿児島中央間の「みずほ」「さくら」のように、新大阪~長崎間の直通列車を設定できます。しかしフリーゲージトレインではそれもできません。

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コメント

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25件のコメント

  1. 軸重、ゲージ、地盤。スペインで成功しても日本で成功しないのはある意味当然。まあ耐久性のない電車を無理に走らせて3桁単位の死者を出すよりましか。

    • それにしてもフリーゲージトレインでここまで難儀するとはな。
      鉄道模型のようにはなかなかいかないな。
      新幹線と在来線の行き来が自在になれば、平行在来線の問題にも一石投じることが出来るかもしれないのに。

  2. 佐賀県にはフル企画がんばって欲しい。将来日本全体の新幹線計画にか変わりますし九州内ならメリット低いが、中部、関西、中国含めるとそうでもないこと、海外では意外に人気あることなどふまえると、英断をと思う。

    • >九州内ならメリット低いが、中部、関西、中国含めるとそうでもないこと

      それははっきりいって疑問。
      すでに佐賀空港があるし、しかもその佐賀空港からも大阪線と名古屋線がとっくに廃止になっている。
      そんな状況で、その程度のことをメリットを言われても…

  3. フル規格の部分を狭軌で開業させたらそれでいいのではないか?そうすればリレー式にする必要もない。山陽新幹線への直通はそこまで重要ではないような気もする。狭軌でどのくらいまで速度を出すことが可能かはわからないが、現時点よりも所要時間が短縮できるのは確実だろうし。

    • 一理だが、長崎県を説得できるか?

    • >現時点よりも所要時間が短縮できるのは確実だろうし

      無理。

      それだと「所要時間か利便性か」という話になる。
      所要時間を短縮させようと思えば行き違いを極力減らさねばならず、結果的に閉塞区間が長くなって本数が減る。
      本数を確保しようと思ったら行き違いを増やさねばならないことからは逃れられず、結局速度を犠牲にすることになる。

      フル規格区間でそれではまさに本末転倒。

    • てってってさん、
      多分スーパー特急(昔の設定で最高200km/hだったかな)という事ですよね? ただ長崎県がスーパー特急で納得しますかね?

      GKさん、
      行き違いというのはどこかが単線と想定してますか? 長崎側が在来線のままとか?
      てってってさんの言うのがスーパー特急の場合、長崎県側の新幹線規格新線はフル規格の路盤だから当然複線、在来線は記事内画像でも複線化+既に複線だから、単線区間は無し。260km/h出せなさそうだし他の新幹線へ直通は無理だけど、武雄温泉の乗換えやもたつく軌間変換もなく、ミニ新幹線化に次いで速くはなりそう。

  4. 長崎本線複線区間を単線並列として片方を標準軌に改軌すればよい。
    そして新鳥栖駅で分併設備を設けてミニ新幹線で直通すれば費用対効果も高かろう。
    山陽区間直通させても320km/h運転の実績もあり、8両編成同士ならフル+ミニで併結運用させても16両対応の山陽区間ならホーム有効長の問題はない。
    (あまり営業線多方面分岐を扱ってない現状のCOMTRAC&SIRIUSがまともに新在直通運転を捌けるかはまた別の問題としてありますが…一方向のみで運行リスクを徹底的に排除したいJR東海が難癖つけそうですね)

    需要に応じた設備にすべきです。
    ここでフル規格化など佐賀県のごね得を許してはいけない。

    • これが現実的な落とし所といった感じですね。
      いまさら完全なフル規格なんて、長崎県民以外は誰も納得しないでしょう。
      これだと乗換も発生しないし、FGTだと2回も必要な軌間変更によるタイムロスもないから、在来線扱いだから最高速度は多少落ちるけど、『コストに見合う』時短効果はあるはずです。

    • >フル規格化など佐賀県のごね得

      それじゃあ佐賀県がフル規格化を求めているように映る。

      佐賀県の本音は「新幹線なんか要らない、『かもめ』があれば十分」なのであり、事実誤認を疑われる。

      正直言って、自分も長崎に新幹線は要らないと思う。
      急ぐ人間は長崎自動車道を使えばいい。

    • もかさんのミニ新幹線案に同意します。

      乗り入れてないJR東海とは仲違いしてでも(という訳にはいかないか、線路つながってるし)、秋田新幹線の「単線並列・一部三線軌で行き違い確保」区間を持つJR東日本に、運行ノウハウや線路の保守などの協力を求めれば良いでしょう。

      佐世保線特急が博多直通で残る場合はそのダイヤが苦しいかもですが、落とし処として最良と思います。仮にその後に佐賀県内もフル規格にするなら、在来線はミニの標準軌撤去して身軽な三セク(複線は結構負担だと思う)に移行すればいいし。

      GKさん、
      私は「佐賀県のゴネ得」というのは、佐賀県以外(国、長崎県?、JR九州?)の負担だけで佐賀県内のフル規格を実現することを指してる、と読みました。
      並行在来線や運賃の問題は残るにしても、誰かがフル化の負担してくれるのを待ってるのでは、ということでしょうね。でも長崎熊本鹿児島と北海道や北陸各県からは、「佐賀はズルい!!」の大合唱になりますな。

  5. そもそもが新鳥栖~長崎がたった100kmほどしかないのに、完全フル規格の新幹線はどう考えても『オーバースペック』。
    こんな短い距離ではいくら『高速鉄道』でも時短できない。

    なのでせいぜいいいところ秋田・山形のような『ミニ新幹線』が現実的でしょう。
    少なくともこれで近畿中国地方からは乗換なしで長崎にいけます。
    たいした距離もなく時短効果が薄いんだから、これで十分です。

    • というわけで、佐賀県はフル規格化に反対なのだとも聞いたこともあったのだが・・・?
      現状の特急や高速バスでも大して時間をかけずに福岡市内へ出れるのに、なんでフル規格の金を出さなきゃいかんのよ?というのが言い分だったらしい。

    • 正直いって、中国エリアから長崎まで用のある人間はごく少数なので車輸送のほうが現実的。
      大阪エリアに用のある人間は長崎空港から飛行機で行く。

  6. 長崎新幹線はそこまで必要あるとは思えない。
    これより先にJR北海道問題を和らげるために北海道新幹線札幌延伸が優先だと思う。

    • 長崎新幹線の必要性については私も疑問です。
      ですが同様に、札幌延伸も・・・正直?ですね。勿論延伸されれば便利ですが、正直JR北海道に委ねるのは感心できない(ノウハウ的にも、安全面からも、経営体力的にも)、航空に対してアドバンテージが取れるのは東北(仙台)~道内ぐらいではないかという予測、といった点から疑問視しています。
      仮に延伸したとしても新函館北斗~札幌間はノンストップか、或いは小樽エリアの駅1ヶ所程度に停車の便が殆どではないかと。
      あとの新規設置駅に停めるだけの価値ありますかね・・・?
      事実上、札幌特化の乗り物になり、道民の支持を得られるかどうか。

  7. 佐賀県の地元負担金を長崎県が肩代わりするからフル規格で作れ,その代わり鳥栖以外の佐賀県内の停車は絶対に認めんって,長崎県知事も言っちゃえばいいのに.そうすれば,新幹線に停まって欲しい武雄市や嬉野市は長崎県側に着いて,佐賀県としても意思統一が出来なくなって,結局は金出さざるを得なくなるよ.佐賀市民の個人的な意見では,現状の安くて早い特急で十分だけどね.

    • 確かに手っ取り早い。
      が、長崎県だってあんまり金がないだろうし、佐賀県だって「金をだしてやる」といわれてホイホイするわけにもいかないだろう。
      立場的にね。

      暴論を承知で言うと、長崎県としては、“フル規格の線路と車輌”が県内にあればそれでお腹一杯なんじゃないか?という気がしている。言い換えると、例えば博多へ行くのに乗り換えが10回ぐらいあろうと構わない、とさえ考えているのではないか。要は体裁や見栄、話題性としての新幹線フル規格であって、利便性云々はあまり感心が無い、という印象さえ抱いてしまう。

  8. そもそも長崎まで新幹線を引くメリットが無い。
    複線化と線形の改良、特急車両のさらなる改良程度で十分だと思う。
    たかだか十数分短縮のために莫大なコストと、料金の高騰にメリットが絶対にない。

    • それは在来線複線化等が新幹線スキームと同様に国に手厚く負担してもらえたらの話。現状では在来線複線化事業はほぼ地元のみの負担にならざるを得ず、しかもJRにその負担意思はなく、佐賀、長崎両県にそこまでの余裕は無い。整備新幹線として国の予算を執行してしまっている時点で選択の余地はない。

    • さらに有明線の特性上、複線化&良線形化を達成するための土地の確保が困難を要する事に加え、沿線経済との折衝を一からやらねばならないことを考えれば、在来線複線化は選択肢としては最悪と言えると思う。

  9. JR九州100%負担(もしくは国との折半)にして佐賀県内ノンストップでいいんじゃない?スピードアップは確実にできるよ。

  10. 大変すばらしい整理です。ただ佐賀県の負担800億円は交付税参入後の実質負担と思いますが。

  11. 現時点では、フリーゲージトレインは、 観光列車や「ななつ星」のような「高級周遊列車」や「お召列車」のように、「線路があるところにはどこにでも行くことを目的とする特別な列車」で使うことが適しているのでしょう。その証拠が 近鉄(在来線同士ですが)で「特定の列車に限って使う」という計画です。

    もし今後「日常的な列車」「新幹線ー在来線」でフリーゲージを使うことがあるとした場合、整備新幹線計画にない路線で運行する場合が適しているかもしれません。つまり「(計画路線を含め)新幹線路線網を補完するような路線」・列車にこそ適していたのかもしれません。

    例えば、九州の八代から宮崎方面に向かう列車。この場合、肥薩線・吉都線など既存路線を電化・改修したり、湯前・西米良経由の場合だと未成・廃止区間を新設・復活させたりする必要もあります。

    西日本で言えば、山陰新幹線を造ったうえで、芸備線・木次線を電化・改良した経由で広島~松江間を経由し、松江より先は山陰新幹線を経由する列車。福塩線及び三江線を経路変更して復活した陰陽連絡線・広島~可部線復活した上で経由し浜田方面へ向かう陰陽連絡線など。

    東日本で言えば、羽越新幹線を造ったうえで 磐越東線・西線、陸羽東線・西線 を経由するような列車 など。

    または「局所的な利用」で。例:九州の博多~熊本は新幹線、そこから豊肥本線肥後大津まで。

    せっかく開発したフリーゲージが「無駄」になってほしくないから色々考えてみましたが、

    国民が「無駄だ」とか「政治家は私利私欲のためだけに新幹線を誘致している」とかいうレベルでしか物事を考えきれないならば、本当に「無駄」になってしまうかも。

    新幹線関連のコメントを見ているとそのような 「低レベルで勘ぐったような発言」が目立ちます