「2階建てバス」はどこへ行く? 老朽化進むも国産モデルなし 代替迫られるバス会社

高速バスなど採用されていた2階建てバスが、数を減らしています。国産唯一の2階建てバス「エアロキング」の製造が中止されたためです。これを導入していたバス事業者は、車両の代替という課題に、どのように対応しているのでしょうか。

規制緩和で採用が増えた「エアロキング」

 高速バスや定期観光バスを中心に、2階建てのバスが走っていることがあります。その多くでは、「エアロキング」という名の車両が使われています。

Large 20180114 01
2階建てバス「エアロキング」で運行されるジェイアール東海バスの「ドリームなごや号」(須田浩司撮影)。

 2階建てバス「エアロキング」は、三菱自動車工業(現:三菱ふそうトラック・バス)が1983(昭和58)年の東京モーターショーで発表し、1985(昭和60)年に発売を開始しました。当時は空前の「2階建バスブーム」で、日野自動車や日産ディーゼル(現:UDトラックス)といったライバルメーカーも相次いで2階建てバスを発表していました。車内からの眺望のよさなどから観光バスとしての需要が高かったのですが、法律の関係で2階部分の室内高を高くすることができず、居住性の問題から、やがて観光バスとしての需要は少なくなります。

 その後、1990年代に入り、2階建てバスのワンマン運行が基準緩和によって可能になったことから、乗客を多く運べるメリットが生かせる夜行高速バスへの採用例が、JR系バス会社を中心に増えていきます。特に、運行路線が多いジェイアールバス関東や西日本ジェイアールバスでは、「エアロキング」を大量に導入。その一部は現在でも各路線で活躍しています。そのため、2008年に発表された最終モデルでは、あらかじめ長距離路線の運行に特化されたパッケージングとなっていました。

「ポスト新長期排ガス規制」が影響して製造中止に

「エアロキング」は2005(平成17)年から3年間の製造中止を挟みつつも、じつに25年ものあいだ販売されました。10年から15年でフルモデルチェンジする国産バスにおいては、ロングセラー商品といえます。しかしながら、三菱ふそうトラック・バスは、2010(平成22)年6月に「エアロキング」の製造および販売中止を発表します。

 その理由は、「平成21年(ポスト新長期)排ガス規制」。同年9月に実施されたこの排ガス規制への対応は、コスト面から困難であるとメーカー側が判断したからです。

Large 20180114 02
2階建てバスで運行される高速路線バス。おもなものを抜粋(須田浩司作成)。

「エアロキング」の製造、販売中止は、乗客を多く運べるメリットに目をつけて導入したバス事業者にとっては、代替車両の検討に頭を悩ませることになりました。

この記事の画像をもっと見る(17枚)

最新記事

コメント

12件のコメント

  1. 二階建てバスの隠れた長所として、一階席だとノンステップバス並みのステップ高さが挙げられると思います。

    高齢化が進行して2025年には団塊世代が後期高齢者になります。

    このバリアフリー性能は特筆出来ると思います。

    さらに、背高コンテナで規制緩和されている車両高さ4.1m、連接バスで導入が進む幅2.55mであれば海外の大手バスメーカー車両が導入できます。

    日本独自規格になる為メンテナンスコストが嵩む訳なので、前例があるサイズへの規制緩和はもう少しやっても良いのでは?

    • 将来の橋梁ないしトンネル補修工事の際の制限高さに引っ掛かりそうな微妙な高さと、道路補修工事の際の安全幅員をオーバーしそうな幅だな。いくら路線を制限していても。

    • 背高コンテナについてはほぼ全ての高速自動車国道と、一桁及び二桁国道辺りは対応済みです。

      問題は阪急バスターミナルの様に高さ制限の有るバスターミナルです。

      それもバスタの様な統合型のバスターミナル整備事業を国交省が進めておりまして、その計画を4.1m対応と修正すれば2025年頃には対応済みになるかと思います。

      道路幅員も道路構造令が修正され、1車線当たり3.25m乃至3.5mが増えて来ておりますので、対応出来るかと思います。

      そもそも全世界で見ればバスの台数は急増しておりますし、日本国内需要だけでは量産効果は期待出来ないですが、世界規格となれば話は変わるかと思います。

  2. 2008年以降の直6ターボエンジン車は尿素でBKG記号の新長期には対応したけど、一階席が妙に排ガス臭いのとホイルベース短縮の影響が何処に出たか?V8車より一階の配列が違うのは型式で変えたか?しかし大型の車枠に納まる2階建てが消える影響は平屋バス運賃の値上げにつながるのは避けられないでしょうね

  3. せめてJRバスグループだけででも代替新車の研究が出来ないものかと・・・。

    もうメーカーで造りません、ああそうですか、の一辺倒で本当に良いのだろうか。

    メガライナーのトラウマが足枷になっているのも分かるけど、そろそろ海外メーカーにも目を向けてみては?この点、はとバスに是非倣って欲しい。

    2階建てバスというスタイルを永遠に放棄して本当に良いのか、考えてみるのも決して無駄ではないだろう。

    • 全くご指摘の通り、今や実際の国内バス製造会社は僅かに2社、以前は他に富士重や九州の西日本車体にトラック4社がエンジンや足周りを送りこんで各々の会社の車体を乗せた各メーカーのバスが枝分かれしてましたが今やこんなんになるとは残念です、運行会社独自で何かを始めないとこの合理化路線は暫く止まらんでしょうね、ガーラとセレガのように、エルガとブルーリボンのように互いに違うメーカーの販売店が実際の同車種を扱う場合に互いの技術が公表できにくい整備状況の中で、大きな修理は日野エンジンのいすゞガーラを日野販売店へ、いすゞエンジンの日野ブルーリボンをいすゞ販売店へ入庫させるユーザー照会後の措置もあるようです。願わくば今のバス製造会社が独自でユーザーや所有者に譲渡できる仕組みが出来ればと思いますが無理でしょうね

  4. 座席定員は多く出来るが居住性が劣る(天井の低さとトイレの狭いなどの)上にメンテナンスコストが高くつき、更にエンジン火災が相次いだのもメーカー・運行会社共に2階建てバスの継続製造・導入に消極的な理由のひとつでしょう。スーパーハイデッカー・ハイデッカー車なら、京王バスで導入が進んでいますが、車体幅とほぼ等しい広いトイレの設置が出来るので尚更2階建てバスの再登板の可能性は低いと思います。

    2階建てバスの1階部分はノンステップなので『そこだけ見れば』バリアフリーかもしれませんが、その他の車内設備(特にトイレ)や停留所ならびにアクセス道の構造などを考慮すると一般路線バスと同等に比較するのは違うのではないかとも思います。

    • 居住性を考えると、高さ方向よりも、

      普通のバスベースにして、長さ方向を規制緩和してもらった方が良いのではないだろうか?

      数年前、どこかのJRバスが規制緩和を求めていたとかうろ覚えが

  5. 私もJR九州で運転してました。

    乗り心地や出力は2階建てなので良いとは言えませんが、目立つ存在でした。

    もう運転する事はほぼ無いですが、また運転してみたいバスです。

  6. 日野車にもRY638と言う型式の2階建てがありました。三菱がエアロキングなら日野はグランビュー、トヨタのグランビアみたいですがトレーラーヘッドにしか設定の無かったEF750と言うV8ターボを搭載していました。確か?エアロキングも初代はV8ターボだったと記憶してますが最終キングも直6ターボでV8以上のトルクを引き出す技術の進歩は凄いと思いますね

  7. よし、今度は3階建てのエアロカイザーを走らせようw

    • ジィク・カイザー!!(笑)

      ああそうだった、今そっちの傘下なんでしたっけ。忘れてました。

      昔、銀河英雄伝説という小説にはまったこともあって、ついつい食いついてしまいましたとさ。