2018年の鉄道を振り返る 新型特急デビューや地下鉄民営化(写真16枚)

被害を最小限に抑えた「計画運休」

 9月には台風21号が近畿地方を襲いました。最大瞬間風速50m/s以上を記録した強風と高潮による被害が深刻で、9月4日には強風で流されたタンカーが関西空港の連絡橋に衝突、橋桁が損傷する事故も発生。9月17日までJR関西空港線と南海空港線が不通となりました。

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東海道新幹線「のぞみ」殺傷事件を受け行われるようになった「不測の事態対応訓練」の様子(2018年8月、草町義和撮影)。

 このほか、強風による送電線のショートとみられる火災で南海本線 尾崎駅(大阪府阪南市)の駅舎が全焼。また大阪府泉佐野市にあるJR西日本の車両基地で電柱が倒壊し、車両の出入りができなくなるなど、大きな被害が発生しました。

 ただ、施設に大きな被害が出た一方で乗客に被害がなかったことは幸いでした。JR西日本は台風21号が最接近する前日、京阪神の在来線全線を4日午前10時ごろまでにすべての運転を取りやめる「計画運休」を発表。広く外出の自粛が行われたことが功を奏したのです。これを受けて、9月30日の台風24号ではJR東日本も初めて「計画運休」を実施するなど、今後の広がりが期待されています。

 台風の余韻冷めやらぬ9月6日未明、北海道で初めて震度7を観測した「北海道胆振東部地震」が発生します。地震によって発生した大規模停電(ブラックアウト)の影響で道内の鉄道は終日運転を見合わせました。発電所の完全復旧まで、JR北海道や札幌市地下鉄が運転本数の削減や、照明や空調を切るなどの節電対応に迫られ、通常運行に戻ったのは地震発生から2週間後の9月20日でした。

 震源に近いJR北海道の千歳線、日高本線、石勝線、室蘭本線では線路がゆがむなどの被害が発生。復旧した部分で徐行運転を行っているため、一部の区間で列車の遅延が発生しています。この地震はJR北海道の経営危機をさらに深刻化させるものになりました。

 いずれのニュースも2018年で終わるものではなく、2019年に引き継がれる課題になりそうな、話題の多い年になりました。

【了】

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Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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