どうなる? 2021年の鉄道 運賃見直しの機運も 終電繰り上げは全国に波及するか
コロナ禍は「7割経済」? ホテルやリゾート事業の見直しもあり得る
一方で、運賃収入の大幅な落ち込みを受け収支改善を図る必要があるとして、JR四国と近鉄が運賃値上げの検討に着手したとも報じられています。大手私鉄ですら赤字に苦しんでいる中、地方中小私鉄の経営は厳しさを増しており、増収を目的とした運賃値上げに踏み切る事業者が続く可能性も否定できません。
コロナ禍は「7割経済」をもたらすといわれています。実際、大手私鉄の直近の輸送人員は例年の7割程度で推移しており、運輸事業は軒並み赤字に転落しています。しかし、第2四半期単体(7月から9月まで)で見ると、東武鉄道や阪急・阪神ホールディングスのように運輸事業の営業黒字化を達成している企業もあり、7割の乗客でいかに利益を出せる体制を構築していくかが問われることになりそうです。その過程では、経営の足かせとなっているホテル・レジャー・リゾート事業の整理縮小なども進む可能性があります。
最後にひとつ明るい話題を紹介しましょう。4月中旬、小田急線の海老名駅隣接地(神奈川県海老名市)に「ロマンスカーミュージアム」がオープン予定です。関東大手私鉄では東急、東武、東京メトロ、京王、京急に次ぐ企業博物館となり、小田急が誇る歴代ロマンスカーの展示や、実際の運転席を用いた運転シミュレーター、小田急沿線を再現したジオラマなどが楽しめる施設になるようです。もっとも「密」を避けるため、しばらくは入場制限が行われることになるかもしれません。
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Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx
JR各社に関しては通勤定期の割引率が高すぎるので、割引率を民鉄レベルに引き下げれば解決するのでは?