鉄道業界の今後を左右?「山手線最後の踏切」廃止の理由 利便や安全性だけでない事情
廃止理由には新型車両の導入も関係
踏切を渡らずに線路の南北を行き来するには、駒込駅寄り約300mに設置された中里第一隧道を利用するのが最も近道です。ただし、往復すれば600m。これをかなりの遠回りと見るか、わずかな手間と捉えるかは人ぞれぞれでしょう。
加えて、中里第一隧道は自動車が通行できません。こうした点が考慮されて、第二中里踏切は残ってきたと考えられます。
踏切は鉄道事故のもとになるので、安全面を考慮すれば廃止するに越したことはありません。先述の例のように優先度の高い踏切から、行政と鉄道事業者が協力して廃止を進めます。しかしながら第二中里踏切の廃止が決まったのには、別の理由もあります。
それは2020年1月、山手線を走る車両がすべてE235系という新型車両に置き換わったこと。JR東日本は将来的に、同線で運転士を必要としない無人運転の導入を目指しています。
すでにE235系では自動で列車を運転する試験が繰り返されており、試験走行では第二中里踏切も通過しています。踏切の通過は可能ですが、より安全性を高めるため、人などが容易に線路内に立ち入れてしまう踏切は廃止するのが前提です。
自動運転が可能になると、究極的には運転士という人員を割かずに済みます。運転士不足を解消する切り札として鉄道事業者全体から期待され、山手線の試験はその成り行きに注目が集まっているのです。
第二中里踏切の廃止予定は約10年後とされています。それまでに自動運転の技術はきっと向上していることでしょう。廃止が決まりつつも、実験として自動運転列車が通過する第二中里踏切は、鉄道業界の今後を大きく左右する存在といえそうです。
【了】
Writer: 小川裕夫(フリーランスライター・カメラマン)
フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。官邸で実施される首相会見には、唯一のフリーランスカメラマンとしても参加。著書『踏切天国』(秀和システム)、『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)など。
新交通システムの沿線と違って、山手線が走るところは計画都市ではないので外乱要因が多いですね。古いアパートに干してあった布団が突風で飛んでくるとか。ホームドアは半端なハーフハイトで線路を痴漢に逃げられたりとか。
無人運転にするなら札幌の地下鉄や横浜羽沢の貨物線みたいにシェルターで軌道を覆わなければならないと思います。