列車の窓は“脱出口”か コロナ禍に京王線事件 なぜ「少しだけ開く窓」になったのか

開けられなくなった窓で起きた「事故」

 しかし車内冷房が普及したことで窓を開ける必要はなくなり、1993(平成5)年に登場したJR東日本の209系車両では、換気と冷房を兼ねた空調装置を通年可動させることで、車両端の小窓を除き、開閉しない固定窓としました。

 ところが換気と冷房を空調装置に頼るということは、停電すると換気ができなくなることを意味します。実際に2005(平成17)年8月、209系が停電事故で長時間立ち往生した際に体調不良者が続出する事態となり、結局、固定窓の一部を開閉できるように改修工事が行われました。

 この事故より前の2000(平成12)年に登場した、209系の改良型であるE231系から既に開閉できる窓が備えられるようになっていましたが、これがコロナ禍においても吉と出る結果となったのです。

 もうひとつの窓にまつわるトピックスが2021年10月、京王線の特急列車内で刃物を持った男が乗客を刺し、オイルを撒いて火をつけた事件です。特急列車は通常なら通過する国領駅に緊急停車しましたが、乗客が非常用ドアコックを操作したこともあり、ホームドアと車両のドアがずれた位置に停車したまま車両を動かせなくなってしまったのです。車掌はドア位置がずれた状態で開扉するのは危険と判断。パニックになった乗客が窓からホームに脱出する映像をニュースで見た方も多いでしょう。

 それでは、窓は脱出口としても機能するのでしょうか。現在の通勤車両の窓は上半分が開く構造が一般的です。窓の高さは約1mですから、その半分の50cm程度の幅があるため人が通ることは可能です。

 国鉄はかつて「二段上昇式」と呼ばれる完全に開けられる窓を設置していました。混雑した車内でドアまで移動することが困難な場合に、窓から乗り降りしたという逸話もあるほどです。しかし走行中に窓から身を乗り出すと対向列車や架線柱に衝突する恐れがあり危険なことから、下半分は開かない構造の窓が主流となりました。

【写真】幅10cm 京急の「激せま窓」

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コメント

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2件のコメント

  1. 209系の窓は固定な上どう考えてもケチった運転、更に光線吸収のレベルも特急車輌に劣っていて正直憎しみの対象だった。
    そんな折りに発生した車内で刺激臭のあるガスの散布事件。
    あの固定窓を破る客が出れば良いと本気で思ったくらい。
    結局一部の窓が開閉可能に改修されたが。
    しかし、非常時に窓を破る客がいなかったのは、日本人のお行儀の良さだろうか。
    ジョーカー事件見て行儀が良いのも状況によると思った。

  2. 鉄道車両の窓ガラスは、脱出用ハンマーなどのピンポイント打撃なら粉砕するが、通常のハンマーでは破れないらしい。
    かといって凶器にもなり得るハンマーをそこらじゅうの人が持ち歩いているという社会も怖い。車内備え付けも色々と問題があるだろう。
    窓から脱出できていたら、ということもあろうが、容易に通り抜けられそうな窓はちょっと昔の普通列車のような上昇窓(上段が上昇でなくとも可)で、今後そういう先祖返りは無理かと思う。