明治の汽笛再び! 豊洲に安住した流浪の機関車の正体 136年目で“歴史的な石の台座”に鎮座

土台に高輪築堤の築石を持ってきた

 汽笛の音色は録音ではなく403号の生の音で、コンプレッサーで汽笛にエアーを送って奏でています。周囲の人々は「これが明治の機関車の汽笛か」とびっくりしている様子。拍手に包まれながら、403号が新たな地でお披露目された瞬間でした。

 次いで流れたのは走行音。さすがに403号現役時の音ではなく、愛知県の明治村で動態保存されている9号機関車の走行を採音してアレンジしたものです。毎日正午と17時に流します。正午は午後も元気が出るような音調、17時は家路へと帰る音調とアレンジが2種類あるので、耳でも楽しめる保存機関車となっています。

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除幕式の参列者。左から4番目が佐藤元哉校長(2022年11月12日、吉永陽一撮影)。

 なお、土台となる部分には品川~田町間の再開発事業で出土した、鉄道開業の海上築堤遺構「高輪築堤」の築石(つきいし)が使用されています。403号は輸入後すぐに日本鉄道へ“出向”したので高輪築堤を走っていないと考えられますが、同時期の遺構として港区教育委員会とJR東日本から寄贈されました。築堤を模した土台に展示される蒸気機関車というのは、私が知りうる中でここだけだと思います。明治時代を連想させる、なかなか味わい深い展示方法にしばし見とれていました。

「本校の生徒だけでなく、より多くの方々に見て触れてほしいです。機関車の構造にも興味をもってもらえたら、ものづくりの学校としては大変嬉しいですね」

 佐藤校長は403号を見つめながら話します。403号はこれから学校の生徒のみならず、豊洲の地域の人々に愛されながら、流浪の人生を振り返るように余生を過ごしていくでしょう。いつまでも美しく保たれ、この場所が豊洲の新名所になることを願ってやみません。

【了】

【写真】製造当時の403号 ほか、展示されている様子を様々なアングルから

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Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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