戦闘ヘリは本当にもう不要なのか 陸自「アパッチ」廃止でドローン一辺倒に? その危うさ

「アパッチ」を洋上の打撃手段として活用

 当のアメリカは、新規生産のAH-64E「ガーディアン」だけでなく、既存のAH-64D「ロングボウ」も「ガーディアン」へとアップグレードする計画です。そのため現在、陸上自衛隊が保有する「ロングボウ」もこの改修計画でアップグレードを施し、“ガーディアン化” することは可能だといえるでしょう。そして、改修後の機体は海上自衛隊との統合運用に充て、洋上での打撃手段として用いるのです。

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アメリカ海軍の強襲揚陸艦「ペリリュー」に着艦するアメリカ陸軍のAH-64E「ガーディアン」(アメリカ陸軍)。

 前出したように、アメリカは対テロ戦争において、ロングボウの精密射撃能力を高く評価しています。ひるがえって現在、日本の南西諸島方面を見てみると、中国は「真正面からの武力侵攻」ではなく、「漁船団を送り込んで実行支配権を得る」という手法を用いる可能性が高いといわれています。

 多数の小さな漁船で編成された船団との交戦に際して、1隻ごとに「ハープーン」対艦ミサイルを1発ずつ撃ち込むのは威力もコストも過剰です。しかしAH-64「アパッチ」系が装備する30mm機関砲は、優れた命中精度と状況によっては戦車も撃破可能な高威力、それでいて1発あたりの単価は安いというメリットを有しています。それに加えてAH-64E「ガーディアン」が運用可能な「ヘルファイア」ミサイルの対艦仕様も「ハープーン」ミサイルより廉価であり、AH-64系への搭載数も最大16発なので、多勢で進んでくる漁船団へ対処するには好適なのではないでしょうか。

 このように、陸上自衛隊のAH-64D「ロングボウ」を、従来の対戦車中心の地上戦任務から、洋上の監視と制圧の任務へとシフトさせるのです。

 もちろん、洋上でも携行式対空ミサイルや艦対空ミサイル、各種対空火器、さらには戦闘機などの脅威に晒されるのは、敵が上陸した後の日本本土の上空と類似するでしょう。しかし陸地とは異なり、携行式対空ミサイルや各種対空火器はすべて艦艇上から発射されるので、陸地上空の飛行時に比べて、思わぬ方位からの不意打ちは受けにくくなると思われます。

【護衛艦から飛び立つ陸自AH-64Dも】40年前に存在「シー・アパッチ」のオフィシャルイラストほか

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コメント

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4件のコメント

  1. MANPADS や SeaRAM やらの餌食になるだけじゃないッスかね…

  2. 記事に同意。
     戦闘ヘリを廃止してドローンに集約するの未来的には正解だが、あと20年早い。
     ドローンは衛星か基地局からパイロットによる誘導が必要で、通信経路に電子戦機がいる場合は無力化される可能性がある。実際に米プレデターはGPSを誤誘導されて拿捕された。AIのような自律型は現段階では未発展で自爆や誤射になりかねない。

     対ドローンとしてアパッチのような推力に余剰のある戦闘ヘリに機材を装備させ電子戦機にすればよい。そしてコパイロットの操縦で民生の安価なドローンを自爆型に改造して敵ドローンに体当たりさせれば、対空ミサイルより安上がりに。
     そしてMANPADS対策に。携帯型は射程5km程度なので、潜伏可能エリアの5km前からヘリ搭載のドローンで偵察と攻撃する。センサーとミリ波レーダー、ヘルファイアの映像を受信できるならアパッチなら十分に可能。
     もし仮に敵が同じヘリ電子戦や搭載ドローン戦法をとった場合は、アパッチ自らの高い空戦能力で相手の母機ヘリを直接撃墜すればよい。

  3. 正直なところF35Bがいずもやかがで運用されんるんだからアパッチをわざわざガーディアンに改修してまで使うほどじゃないとは思う

  4. 有事の際、輸送ヘリコプターの護衛はどうするの?
    ヘリコプターの護衛に戦闘機は使えないし、ドローンには荷が重い。
    裸同然の状態で任務を行うリスクを負う隊員の生命や士気にかかわるから、現実的な代案を早急に出してほしい。
    『シン・ゴジラ』であったように攻撃寸前で民間人が確認された場合、有人ヘリだから即刻対処できたけど、ドローンなら判断が間に合わずぶっ放してたかもしれない。

    ていうかそもそもまともに国産ドローン作れないのに、国産できるヘリをないがしろにしたらアカンやろ、