世界で2台のみ タイに残る旧軍「一〇〇式鉄道牽引車」は、魔改造で凄まじい出で立ちに
リバー・クワイ・ブリッジ駅そばの広場で保存
終戦後、国内に残された一〇〇式鉄道牽引車は、使い勝手の良さから西武鉄道や国鉄など、様々な鉄道会社で使用されました。そのうちの1台は、東京都と埼玉県の都県境にまたがる朝霞駐屯地内の陸上自衛隊輸送科学校で保存されています。これは日本で唯一現存する車体で、2011(平成23)年にレストアされましたが、駐屯地内のため一般公開はされていません。
これとは別に、もう1台がタイ王国に現存しています。場所はカンチャナブリ県。タイ国鉄南本線のノンプラドック駅から分岐するナムトック線に乗り、クワイ川鉄橋に隣接した観光用の駅、リバー・クワイ・ブリッジで下車すると、すぐ目の前の広場にあります。ナムトック線は、1943(昭和18)年に開通した泰緬鉄道の一部を使用しています。
泰緬鉄道はタイとビルマ(現・ミャンマー)の密林地帯を結ぶ目的で建設された軍用鉄道で、旧日本陸軍の鉄道連隊第五連隊と同第九連隊が従事しました。保存されている一〇〇式鉄道牽引車はメーターゲージ仕様のため、おそらくどちらかの連隊に属した車両で、一式鉄道牽引車であると推測できます。ただ、一〇〇式鉄道牽引車も後年にメーターゲージへ対応した可能性も否定できないため、この記事では「一〇〇式」に統一して話を進めます。
なお、『泰緬鉄道建設記』(泰緬鉄道建設記編纂委員会/1955年 花園書房)によると、「連絡用の軽列車(鉄道牽引車による列車)やモーターカーが運転されていて、…」との記述があるため、具体的な形式名こそ記されていないものの、鉄道牽引車による列車は運行されていたといえそうです。筆者(吉永陽一:写真作家)は2023年2月、現地を訪問しました。
前出の南側広場には、泰緬鉄道で活躍したといわれで、C56形蒸気機関車23号機と英国製蒸気機関車も一緒に保存されています。
コメント