空母に載せる航空機「地上用でよくね?」が到底ムリな理由 その衝撃は「制御された墜落」!?
一番大変な着艦は「制御された墜落」
そして最大の問題なのが着艦時です。通常の着陸ならば、適性速度で着陸してゆっくり減速すればいいですが、そういうわけにはいきません。空母は100mに満たない僅かなスペースに着艦する必要があります。そのため、着艦時には甲板から飛び出さないように急速に減速する必要があります。
そこで考え出されたのが、飛行甲板上にワイヤーを張り、それにひっかけて止めるという方法です。ワイヤーの方を「レスティング・ワイヤー」、艦載機に取り付けられた着艦フックを「アレスティング・フック」と呼びます。
アレスティング・フックに関しては実は艦載機以外も搭載していますが、あくまで事故などの緊急時に地上の滑走路上で使用する陸上機のそれに対し、艦載機のものは250km/h前後の速度で着艦してくる機体を短距離で常時止めるためのものであり、陸上機のものに比べて非常に頑丈に作られています。さらに揺れ動く飛行甲板に降りるため、主脚は「アシンメトリカル・ランディング」と呼ばれる片側だけでの着艦も可能な強度が求められることがあります。
ちなみにアメリカ海軍の空母の場合は、アレスティング・ワイヤーは3本もしくは4本あり、おおむね2本目か3本目にフックが引っ掛かるように着艦します。着艦フックが故障などをしている場合は、最終手段として「エマージェンシー・バリケード・ネット」というバリケード・ネットを張って止めるケースもあります。
空母への着艦は「制御された墜落」と呼ばれることもあり、機体に陸上機では考えられないほどの負荷がかかります。一説によると、陸上機に比べて約6倍もの衝撃に対する強度が求められるとか。
ただ、「シーハリアー」「ハリアー II」などの垂直離発着機を使って、垂直着艦などを行うケースも存在します。2024年現在は、海上自衛隊のいずも型護衛艦に搭載される予定のF-35Bの場合は垂直/短距離離着陸機で「ハリアー II」などに近く、既に運用されているイギリスのクイーン・エリザベス級空母のように垂直着艦を採用すると予想されています。
しかしアメリカ空母では、迅速な発着艦や搭載機を増やすなどの目的のために、F-35シリーズの艦載機タイプであるF-35Cの配備を開始しており、こちらのタイプは折りたたみ式の主翼と、アレスティング・フックを搭載しています。
【了】
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