6ドア車も本領発揮! 日本時代より長くなった国鉄通勤車の今 インドネシアで見てきた

国鉄型205系はデビューから約40年が経過し、運行しているのはJR東日本の仙石線と南武支線の一部、富士急行線のみです。しかし赤道を越えた先のインドネシア・ジャカルタでは、最大勢力として活躍中です。

なお続く部品供給と技術支援

 ただし全205系が12両編成ではなく、8両編成、10両編成も存在し、例えば大動脈路線のボゴール線では、ボゴール~マンガライ間の区間運用に8両編成が投入されています。筆者(吉永陽一:写真作家)がマンガライ駅で見かけた光景では、夕方のラッシュ時に混雑する12両編成のボゴール行きを下車し、折り返し運用で空いている8両編成へと、駆け足で乗り換える乗客達の姿がありました。

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元・JR武蔵野線用の通称「メルヘン顔」。独特なブラックフェイスと丸目前照灯が目を引く。205系の中でも少数派だが、待っていれば出会える存在だ。ボゴール駅にて(2025年2月3日、吉永陽一撮影)

 KCIコミューターラインは、205系より先に譲渡されたチョッパ制御車が次々と運用を離脱しており、車両不足に陥っています。本数確保のために短編成化して対応していますが、大混雑するラッシュ時の短編成列車では焼け石に水です。

インドネシア政府は日本の中古車両輸入を取りやめ、今後は新車の輸入と国産化へシフトしました。中国CRRCの新車が3編成、国産INKA製の新車が12編成導入される予定で、新車導入によって混雑が緩和するか、これからの焦点となっていきそうです。

 ところで、205系は車両譲渡と技術支援がセットで実施され、JR東日本の関係者が技術支援のバックアップを行っています。2014(平成26)年、JR東日本とインドネシア鉄道(PT.KAI)ならびにKCIコミューターラインは協力覚書を締結し、2023年には3回目の協力覚書を再締結しました。

 内容は、JR東日本社員による車両メンテナンス、点検整備の技術支援、検修、部品調達などで、205系の初譲渡から12年経過した2025年でも、継続的な部品供給と技術支援が行われています。205系はKCIコミューターラインのフラッグシップとなり、継続的な支援によってメンテナンス不足を抑制し、安定的な運行と利用者の信頼向上に貢献しています。

 実際に現地を訪れると、どの路線にも205系が発着し、その多さに改めて驚かされます。編成に組み込まれた車両の差異は、趣味的視点で眺めても飽きることはありません。車体はコーポレートカラーである赤帯をまとい、その姿が京葉線を連想させます。

 これから新車が続々と登場してきますが、205系はジャカルタ首都圏の主役としてまだまだ大活躍していくことでしょう。

※一部修正しました(3月9日、17時05分)

【許可を得て潜入!】車両基地で見上げる6ドア車(写真)

Writer:

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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