米国の一存で戦闘力ゼロになるってマジ!? 独メディア「F-35にキルスイッチあるかも」と懸念 その真意
ドイツメディアが、F-35戦闘機にアメリカの判断で機能を停止できる「キルスイッチ」が仕掛けられている可能性があると報じました。こうした懸念は果たして本当なのでしょうか。
ネットワーク依存型の軍事技術の脆弱性を再考すべき
F-35はネットワーク化された後方支援システムによって管理され、運用データは常時アメリカ側のシステムと連携しています。これにより、機体の状態、兵站支援、整備情報が共有されることで、効率的な運用を可能にしています。しかし、仮にアメリカがこのネットワークから特定の国のF-35を切り離すような措置を取った場合、運用は著しく困難になる可能性があるのです。

例えば、必要なソフトウェア・アップデートが提供されなかったり、整備データが取得できなくなったりすれば、F-35は短期間で機能不全に陥る可能性があります。これは物理的な「キルスイッチ」ではないものの、結果的には同じような影響を及ぼすことになると言えるでしょう。
ただし、これはF-35に限った話ではなく、現代のあらゆる先進的な兵器システムに共通する課題です。戦闘機だけでなく、ミサイル防衛システム、サイバー戦能力、電子戦システムなど、あらゆる軍事技術はネットワークを通じて連携し、依存する形で運用されています。したがって、「キルスイッチ」の問題をF-35固有のリスクとして捉えることはナンセンスだと言えます。
F-35に「キルスイッチ」が搭載されているという噂は、技術的・軍事的な誤解と、アメリカによるウクライナへの軍事支援停止を「ヨーロッパに対する裏切り」と受け取った西欧諸国が生んだ「幻」なのではないでしょうか。
今後、各国は過度な「アメリカ依存」のリスクを最小化するために、代替システムの構築や、独自の戦闘機開発により一層重点的に取り組む必要があると考える可能性があります。F-35の「キルスイッチ」疑惑は、単なる陰謀論として片付けるべきではなく、より大きな視点で「ネットワーク依存型軍事技術の脆弱性」を再考する契機となるべきなのかもしれません。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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