『となりのトトロ』に出てきそう!? 昭和レトロな「トツバイ」「ビジバイ」なぜ消えた?「スーパーカブ」とは似て非なるもの

近年人気のホンダ「スーパーカブ」。実はこれも、かつて日本の暮らしを支えてきたビジネスバイクの一つであり、昭和の時代にはさまざまな仕事の現場で活躍していました。そんなビジネスバイクの歴史と魅力を振り返ってみましょう。

1960年代で時間は止まっても愛され続けた

 こうしたビジネスバイクのあり方を根底から変えたのが、1958年に登場したホンダ「スーパーカブ」でした。乗り降りがしやすいアンダーボーンフレームを採用し、女性がスカートでも無理なく乗ることができました。エンジンは静粛性、燃費性能、耐久性、整備性に優れた横型4ストローク空冷単気筒エンジンを搭載。さらにレッグガードや大型キャリアなどの装備も充実しており、瞬く間に人気車種となったのです。

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ダイハツ「ミゼット」とともに個人商店を中心に普及した軽三輪トラックのマツダ「K360」。ビジネスバイクに代わって小口配送や配達などで活躍した(画像:マツダ)

 この画期的なビジネスバイクに触発された各メーカーは、「スーパーカブ」に似たモデルを相次いで発売しました。これにより1960年代中頃のビジネスバイクは、アンダーボーンフレーム車が主流となりました。

 一方、1960年代に入ると日本は高度経済成長期に突入し、庶民の間にもオート三輪や軽自動車が普及し始めます。その結果、これまでビジネスバイクが担ってきた役割は徐々に自動車に取って代わられました。やがてビジネスバイクは新聞や郵便配達、そば屋やすし屋の出前、銀行や保険の営業など、活躍の範囲が限られるようになるのです。

 そうした状況のなか、アンダーボーンフレーム車以外のビジネスバイクの需要は次第に減り、1960年代中頃にはバックボーンフレームやダイヤモンドフレームを採用したビジネスバイク車は定期的なモデルチェンジが停止されます。それでも一定の需要が見込まれたことから、マイナーチェンジを繰り返しつつ何十年も生産が続けられたものもありましたが、基本設計の古さは隠しようがなく、21世紀に入って施行された排出ガス規制に対応できずにそのまま静かにフェードアウトしました。

 現在、「スーパーカブ」を唯一の例外として、かつてのビジネスバイクは姿を消しました。しかし近年では昭和のテイストを色濃く残したレトロデザインが再評価され、にわかに脚光を浴びています。ビジネスバイクの中古車価格は総じて安く、シンプルかつ丈夫な設計なので維持しやすいこともあって、バイクファンの間ではカスタムの素材として人気となっているようです。

 映画『ALWAYS 三丁目の夕日』や『となりのトトロ』で描かれた、かつての昭和時代を生きたバイク。旧車が好きな人は、入門用として絶版となったビジネスバイクの購入を検討してみてはいかがでしょうか。

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Writer:

「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に

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