国産スクーターって鉄製じゃないの!? 少数派の「鉄スクーター」利点は? ベスパに乗ったら “目から鱗” でした

金属製のフレームに樹脂製のボディパネルを組み合わせた構造の一般的なスクーターに対し、スチールボディのものを「鉄スクーター」と言います。現在ではベスパなど少数しかありませんが、その魅力はどこにあるのでしょうか?

特徴的な片持ちサスは鉄製ボディだからこそ

 また、ベスパには航空機の降着装置にヒントを得た片持ちサスペンションが採用されています。これはベスパの誕生当時、イタリアの道路事情がまだ劣悪でパンクすることが多かったことから、スペアタイヤへの交換を容易にする工夫でした。

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ベスパ「946」(画像:ベスパ)。

 雑誌の試乗記などでは「しなやか」と評されることの多いベスパのサスペンションですが、特にフロントは通常2本で支えるフォークがベスパには1本しかないので、負荷はやはり大きく、それに合わせた堅めのセッティングとなっています。そのため、なかには「減衰力が強すぎる」と感じる人もいることでしょう。

 ただし、ロードホールディング性は良好で、短いホイールベースと相まってキビキビしたハンドリングが楽しめます。一般的なスクーターだとこのサスセッティングでは、路面が荒れた道では衝撃や振動が大きく、快適に乗れたものではないハズですが、そこはベスパの面目躍如といったところで、ここでもスチールモノコックボディが不快な衝撃を上手にいなしてくれます。

 もちろん、ベスパにもデメリットはあります。スチール製のボディはオーナーの管理が悪いと錆びますし、万が一転倒した場合には一般的なスクーターと違って、破損したパーツだけを交換して修理することができません。手間と時間がかかるボディの板金修理が必須です。

 なお、これについては、ある意味では古くなって補修パーツの欠品に悩まされないという長所に捉えることができるかもしれません。一方、素材技術が進化したことにより、かつて言われていた「スチールモノコックによるボディの軽さ」という利点は、現在ではほぼなくなっています。

 しかし、「鉄スクーター」ならではの独特の乗り味、スチールボディに映える美しいペイント、「剛性感」の高さによる走行安定性と快適な乗り心地などはやはりベスパならではの魅力です。プラスチックを多用した安っぽいスクーターに満足できなくなったら、「鉄スクーター」の入門用としても、大人が乗るにふさわしい高級シティコミューターとしても、ベスパはオススメできます。

【写真】これが三菱重工が造っていた「異端のバイク」です

Writer:

「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に

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