290mm巨大砲をブッ放せ!最前線で味方を救った「裏方の戦闘車」世界初は “奇想天外兵器だい好き”の国
敵弾が降り注ぐ最前線で障害物除去などを命がけで行う戦闘工兵。彼らの犠牲を減らすめ、イギリスが生み出した世界初の戦闘工兵車が「チャーチルAVRE」です。290mmの巨大砲と変身ロボみたいな特殊装備を持つ“異形の戦車”に迫ります。
アタッチメントで七変化! 最前線で「変身ロボ」化する戦車
もうひとつの大きな特徴は、戦闘工兵の作業量と人的被害の低減を考慮して、車体前面と側面に、各種のアタッチメントが装着できるブラケットが造り付けられたことです。このアタッチメントは、用途に合わせて多種多様なものが造られ、チャーチルAVREはその都度、必要なアタッチメントを、まるで「変身ロボ」のように付け替えて対応できました。これは、過去の工兵車両には例がなく、画期的だったといえるでしょう。
アタッチメントは、爆破作業用のもの、地雷原処理用のもの、泥濘地踏破用のカーペットを敷くためのもの、塹壕や対戦車壕に仮設橋を架けるためのものなど、さまざまな作業に合わせて各種が造られましたが、どれもブラケットを介してチャーチルAVREに取り付けられました。その結果、生身の戦闘工兵が命がけで行う作業を、大幅に減らすことができるようになりました。
こうして生まれた画期的な工兵車両「チャーチルAVRE」は、1944年6月のノルマンディー上陸作戦から実戦投入され、前線では期待どおり戦闘工兵が求められるさまざまな局面で、「生身の人間」の犠牲を大幅に減らして作業を遂行するという実績を出しました。
イギリス陸軍が生み出した「世界初の戦闘工兵車」は大成功を収めたのです。これを受けてイギリス陸軍は戦後、後継車として「チャーチルMk.VII」戦車をベースとした「チャーチルMk.VII AVRE」、さらに「センチュリオン」戦車の派生型である「センチュリオンAVRE」も造られました。
しかし、これに続く「チーフテン」戦車の派生型である戦闘工兵車「チーフテンAVRE」ではコストの問題から砲塔がなくなり、破壊砲が搭載されなくなっています。また続く「チャレンジャー2」戦車ベースの「トロージャンAVRE」は、多用途性を求めて、車体上部にショベルアームを備えるようになったので、これまた砲塔は装備していません。
結果、世界初の戦闘工兵車「チャーチルAVRE」の特徴的な、短砲身の大口径砲(巨大な短鼻)を備えたスタイルは姿を消しています。
Writer: 白石 光(戦史研究家)
東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。





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