サッカーW杯開催→「鉄道運賃“12倍”にしよう」 しかし“ぼったくり”とは言えない特殊事情とは? FIFAは激怒

 幕を控えたサッカーのワールドカップ(W杯)を巡り、ニューヨーク都市圏の競技場と結ぶ列車の大人往復運賃が「約2万4000円」に設定されました。目が飛び出るような金額の背景には特殊な事情がありました。

FIFAは大激怒!

 折しも、好戦的なトランプ氏はイラン攻撃にとどまらず、1月に南米ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領(当時)を拘束して政権を崩壊させたり、反米姿勢を鮮明にしている中米キューバを経済制裁によって追い詰めたりしており、「トランプ政権のために反米感情が世界で高まっている」(アメリカ人経営者)という危険な状態にあります。

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ハドソン川を挟んでニュージャージー州から眺めたニューヨーク中心部マンハッタン(大塚圭一郎撮影)

 トランプ氏が出席した2026年4月25日の首都ワシントンでの夕食会では、会場近くでトランプ氏らを狙った会場近くでの発砲事件が発生。過去にもトランプ氏を狙った暗殺未遂事件などが複数回起きており、大統領選候補として演説していた2024年7月には銃撃を受けて右耳を負傷しました。

 国際的なスポーツ大会はただでさえ「注目度が高いためテロなどの標的にされるリスクがあり、厳重な警備が必要となる」(政府関係者)とされますが、アメリカおよびトランプ政権が国内外から反感を買っていることを踏まえればなおさらです。

 筆者の知人のアメリカ人も「私たちを見る目が厳しくなっており、外国を旅行する時にはアメリカ人だと思われないようにオーストラリア人のような英語で話すようにしている」と打ち明けました。

 W杯サッカーの開催費用がかさむ中でニュージャージー州のミキー・シェリル知事(民主党)は、NJトランジットを通常運賃で運営した場合には少なくとも4800万ドル(76億8000万円)の費用負担を強いられると試算。「開催のためにニュージャージー州の通勤者や、納税者を犠牲にしてはならない」と訴え、W杯期間中に110億ドル(1兆7600億円)を稼ぎ出すFIFA側に対して観客輸送の費用負担を求めました。

 しかし、FIFAはアメリカの他の開催都市では公共交通機関の運賃がおおむね据え置かれていると反論して拒否し、平行線をたどりました。

 このため、ニュージャージー州は列車運行に加え、利用者の誘導や警備といった費用も支出しても理にかなうNJトランジットの往復運賃として150ドルという高額をはじき出したのです。

 FIFAの2026年W杯のハイモ・シルギ大会運営責任者(COO)は、運賃設定について「萎縮効果をもたらす」と批判。観客が鉄道利用を避けることで「必然的に他の交通手段へ向かわせる」とし、そのために「混雑や到着の遅延といった懸念を高め、より広範なマイナス効果を生み出し、最終的には地域全体がW杯開催によって得られるはずの経済的利益や永続的な遺産を損なうことになる」と警告しました。

 果たして鉄道で往復150ドルの“プラチナチケット”は「完売」するのか、それとも敬遠されてせっかくの列車が空気を運ぶことになるのか。その成り行きは、サッカーW杯の好カードも顔負けの“目玉試合”になりそうです。

【ここが往復2.4万円!?】ニューヨークと「W杯会場」の位置(地図/写真)

Writer:

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。

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