御年99歳“名鉄の生き証人”ついに引退へ 最近は「貨車を挟んで」電車を牽引 大手私鉄最後の“凸型電気機関車”
名鉄で車両の入換用として使われてきた電気機関車「デキ303」が引退します。日本の電気機関車の黎明期に製造された貴重な車両で、その引退により大手私鉄から「凸型」の電気機関車が姿を消します。
デキ303の希少価値
舞木検査場では、車両の大がかりな検査や改造が行われています。その際に電車は切り離され、大がかりな検査では分解整備を行うために自走できなくなります。その車両を検査場の建屋に押し込んだり、逆に引き出したりするのが牽引車の役割です。
舞木検査場の建屋の中は架線がないため、デキ303は架線があるところまで走行し、無蓋貨車のトラ73を介して、検査する電車を建屋の奥に押し込みます。ちなみに、新型の牽引車はバッテリーで動くため、架線の有無を気にする必要はありません。
デキ303は全長10152mm、重さ約30tの機関車です。出力は当初、約300kWでしたが、1968(昭和43)年の改造でモーターを交換して240kWになっています。登場した昭和初期は日本の電気機関車の黎明期で、海外製から国産に移行しつつある時期でした。
先の通り、デキ303は三菱造船所が車体関係を、三菱電機が走行機器関係を担当して造られています。凸型の車体で、中央にある運転室には車体の前後から出入りする構造です。このため、ボンネットに当たる部分は片側に寄せ、運転室に出入りするための通路を設けた構造としています。このスタイルは、アメリカから輸入した電気機関車に見られるものです。
このアメリカ製の電気機関車は車体関係がボールドウィン、走行機器関係はウェスチングハウスが担当したものが多数を占めています。2026年現在も、青森の弘南鉄道のED221やED333が現役ですが、かつては名鉄にも同型の電気機関車がありました。保存車両だと、アルピコ交通(元・松本電気鉄道)のED301や三岐鉄道西藤原駅のED222などがあります。デキ303はアメリカ製電気機関車に倣った造り、と言えるのかもしれません。
デキ303はのちに運転台が改修され、速度計などの計器類はパネルに収められています。電車に似た構造ですが、デキ303はブレーキが左手側、自動車のアクセルに相当するマスコンが右側に配置されています。一般的な電車の配置と逆で、機関車らしいところです。このマスコンは三菱電機製ですが、モーターは東洋電機製に交換されています。
運転台は凸型部分の前後にあり、間の機器室にはボンネットの部分に入らなかった機器が収められています。機器室には細い通路があり、前後の運転台を行き来できます。
デキ303のように三菱造船所と三菱電機の組み合わせで造られた重さ30t級の凸型電気機関車は数が少なく、その多くは名鉄が保有していました。デキ303の引退で、黎明期の希少な凸型電気機関車の一つがなくなります。
Writer: 柴田東吾(鉄道趣味ライター)
1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR線の2度目の「乗りつぶし」に挑戦するも、九州南部を残して頓挫、飛行機の趣味は某ハイジャック事件からコクピットへの入室ができなくなり、挫折。現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。鉄道雑誌への寄稿多数。資格は大型二種免許を取るも、一度もバスで路上を走った経験なし。





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