「67年ぶりの新型車両」増備で旧型車両が引退へ いろいろ魔改造された“おさがり”の60年選手 乗れるのは残りわずか?

鉄道友の会ローレル賞に輝いた新型車両の導入を進める地方私鉄で、首都圏大手私鉄から譲り受けた「アラ還」電車の完全引退が迫っています。それはオリジナル車両にさまざまな手を加えた“魔改造車”でした。

足回りも替えている! “魔改造”を味わえるのはあとわずか

 特徴的な片開き扉をくぐって車内に入ると、かつて京王線で乗ったオリジナル車両にはなかった装備を見つけました。片側の扉の上に、次の停車駅などを案内する横長の液晶表示を設けていたのです。伊予鉄市内電車の最新型車両のモハ5000形や、かつて走っていた蒸気機関車(SL)と客車を模した観光列車「坊っちゃん列車」のイラストも映し出すなどしゃれています。

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古町車庫に停車中の伊予鉄道3000系。もと京王3000系(大塚圭一郎撮影)

 扉の脇にある車内照明が消えたときに光る予備灯は京王時代のままです。筆者はさらに壁面の天井下にあるはずの装備を探しました。京王電鉄の旧社名「京王帝都電鉄」の英語名の頭文字である「KTR」の文字が入ったスピーカーです。ところが、網の目になったカバーが覆っていました。実はKTRの文字は残っており、カバーの中をよく見ると読み取ることができるとか。

 かつて京王井の頭線沿線に住んでいた筆者は、単線の横河原線を走る700系のえんじ色のロングシートに揺られて懐かしみました。5駅先の久米(松山市)の1面2線のプラットホームでは、移籍後も型式名が3000系の元京王井の頭線3000系と隣になり、京王出身車両同士の遭遇に歓喜しました。

 終点の横河原(愛媛県東温市)の3駅手前の田窪(同)で下車。1駅先の見奈良(同)まで歩き、横河原で折り返して高浜へ向かう700系の写真を途中で撮りました。

 1面2線ホームの見奈良で松山市方面へ向かう電車を待っていると、前の列車に続いて700系が入線しました。718と768の2両編成で、ともに1966年製です。

 この編成の718と、往路に乗った編成の719は電動車で、東武鉄道2000系の廃車から流用した台車「FS340」を履いています。線路幅が1372mmの京王線から1067mmの伊予鉄へ移籍した際に取り付けられました。

 さらに見奈良に入線した反対方向の横河原行きは、765と715、725の3両編成。わずか15分間に、残っている700系の3編成全てが現れました。

 3両編成につないだ電動車の725は1964年に造られ、車体幅が2700mmと他の6両より100mm短くなっています。小田急電鉄2220形・2230形に使っていた台車「FS316」を流用しており、この台車を用いているのは現存する700系で唯一です。FS316はコイルバネ台車で、空気ばね台車を履いた他の6両と比べると「縦揺れしやすく、乗り心地はやや荒い」(前出の友人)とか。

 京王の車体に東武の台車、京王の車体に小田急の台車など、さまざまなバリエーションの“魔改造車”が存在する伊予鉄700系。完全引退まであと数か月、残された編成を乗り比べて記憶に刻むならば今がそのときです。

【地図/写真】元京王のエース「なんか違和感ある」改造車内(画像で見る)

Writer:

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。

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