【空から撮った鉄道】羽田新ルートと眼下の鉄道 新たに見られるようになった旅客機との出会い

羽田空港へ着陸する経路に都心を通過するルートが新設され、南風の夏場である現在はほぼ毎日、都心部を旅客機が飛行しています。旅客機が降下しながら都心に飛来する姿は初めての出来事です。旅客機のさらに上から空撮しました。

試験飛行期間中でも南風にならないと実現せず 天候を予測して撮影計画を練る

 2020年2月2日(日)の15時過ぎ、都心の上空に旅客機が降下しながら現れました。羽田空港A滑走路、C滑走路へ着陸する新しい飛行ルートです。風向きが南風のときに15時から運用を開始し、一般的に「羽田新ルート」と呼ばれています。「羽田新ルート」は離発着回数増大のため新設されたもので、国土交通省の資料によると年間3万9000回の国際線離着陸増加が見込まれます。

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羽田空港へ向かって南下するJALのボーイング767-300型機(JA8980/ワンワールド塗装機)を青山上空で撮影。画面下に見えるのは山手線の新大久保駅で、ちょうどE235系の内回り電車が進入する。JA8980は、まだギア(車輪)を出していない(2020年2月5日、吉永陽一撮影)。

 都心部を北から南へ縦断するふたつのルートは、共に近接しており、両ルートを旅客機が並行して飛行するときもあります。そしてこのふたつのルートは、新宿駅、渋谷駅、品川駅、大井町駅、山手線、東海道本線などと交わります。新たに鉄道と旅客機の出会いが見られることになります。

 飛行ルートは、2019年の秋から航空局所属の検査機であるサイテーションCJ4小型ジェット機が、計器やGPSなどの確認のため早朝に試験飛行が行われ、そのときに地上からだいたいの雰囲気を把握しました。年が明けた2月、「羽田新ルート」はいよいよ旅客を乗せた状態で試験運用を開始。限られた期間に合計7回のテスト飛行をするため、何日に飛行するかは、南風にならないと分かりません。天候を予測しながら計画を立て、管制圏内の飛行となるため、事前申請と当日の調整が必要となりました。

 2月2日の試験飛行開始日は、報道ヘリが次々と飛行しているため、こちらが飛行してじっくり撮れる状況ではありません。ニュース性の高い空撮なので、早めに撮りたいところですが、2~3日は報道機が飛ぶだろうと思い、4日(火)以降で狙いました。しかし、4日は夕方から夜間という、変則的な時間での運用でNG。撮影を実行したのは2月5日(水)となりました。

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ファインダーを覗いてJALのボーイング767-300型機を後追いしながら、開業間近の高輪ゲートウェイ駅が見えたところでシャッターを切る。駅横の留置線にいるE657系やE231系、E233系、215系と旅客機とのコラボが実現した(2020年2月5日、吉永陽一撮影)。

 風向きは南。「フライトレーダー24」のサイトを見ると、15時から「羽田新ルート」の運用が開始されました。私は15時前から待機していて、いつでも出発できる状態にはしていたのですが、管制官から飛行許可が降りるのに少々時間がかかり、16時前の離陸となりました。事前に飛行申請をしていても、当日の状況によって飛行許可が下りるかどうか分かりません。ダメだったら諦めるかと思っていましたが、なんとか飛べることとなってホッとしました。

 管制官から指定された高度は、6500から7000フィート。メートルで換算すると約2000mあたりでの飛行となります。当日の天気は晴れているものの少しガスっていて、夕方のため、ややオレンジがかった斜光です。空撮にはあまり向かない天候ですが、今回は可能ならば撮影するという条件なので実行します。限られた時間で撮影するため、あちこち移動せず、場所は三ヶ所ほどに絞り、レンズは遠方から飛行する姿を空撮するため、最大で600mmまで用意し、状況によって使い分けることにしました。

 青山上空へ到着すると、さっそく北方向から旅客機が眼下を抜けていきます。最初は旅客機も米粒大の大きさで、なおかつ機体が白っぽいので、周囲の街並みと同化して確認しづらい。それでも西日が当たっているのが幸いして、機体が米粒大でも一瞬キラッと光りました。視認したら、あとは近づいてくるタイミングを狙って、超望遠、望遠、標準と、三種のレンズを装着したカメラを取り替えながら撮影します。

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新宿上空を降下するANAのボーイング787-8型機(JA807A)。左は新宿駅で、右の公園は新宿御苑。冬の夕方は太陽高度が低いため、地上部分はほとんど影になってしまうが、機体はスポットライトのように浮かび上がる(2020年2月5日、吉永陽一撮影)。

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Writer:

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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