なぜボクらは2階建て列車が好きなのか E4系新幹線「Max」引退前に思うこと
2階建て新幹線「Max」のE4系が間もなく引退します。2階席は人気ですが、なぜでしょうか。眺望の良さに加え、かねてから人々が抱いていた「憧れ」があると筆者は感じます。大量の通勤客やスキー客のほかに運んだものは何だったのでしょうか。
初乗車時、2階席を期待したら1階席だった
2階席からの眺望が人気のE4系新幹線「Max」。今、その引退を惜しむ声が高まっています。しかし筆者(杉山淳一:鉄道ライター)が初めて乗ったE4系は1階席でした。
1996(平成8)年に退社してフリーライターになった翌年、元同僚から展示会スタッフの仕事をいただきました。場所は宇都宮。私は「ライターの仕事じゃないし……」と渋りましたが、「杉山さん、E4系のチケットを用意しましたから」と言われ、「1997(平成9)年に登場したばかりのE4系に乗れるなら行こう」と承諾しました。鉄道好きの性格を見抜かれていたようです。
ところが、指定席は1階席でした。しかも車両の端、目の前は壁です。「2階席だと思っていたのに、だまし討ちだ」などと思ったものですが、この席も良かった。景色に期待できないぶん、個室感があって仕事の資料読みがはかどります。また乗って感じたのが「景色は意外と悪くない」ということ。眺望はなくても、目の前ギリギリのところをプラットホームの端や標識などの構造物が飛ぶように現れ消えていく。いままで体験できなかった迫力がありました。
なぜ私が2階席にこだわったのか。それは以前の楽しい体験が記憶にあったからです。東海道新幹線の100系は食堂車が2階建て。そこではカレーライスを食べました。在来線ではオール2階建て215系電車のホリデー快速「ビューやまなし」に乗車。もちろん早くから並んで2階席へ。だからE4系でも2階に乗りたかったわけです。
念願だったE4系2階席の初乗車は2004(平成16)年7月。友人と4人で快速「SLばんえつ物語」で新潟に行き、その帰りに自由席を取りました。空いていましたから、狭いと噂の6人席を4人で向かい合わせて使い、楽ちん。リクライニングしないなど気になりません。
ところで、E4系の引退を惜しむ記事の多くは、やはり2階席の眺望を称えています。「2階建て列車の2階席」は私たちの憧れなのかもしれません。なぜでしょうか。
ありがとうございます。ちょうど80年代末期くから90年代にかけてはダブルデッカーブームであり、列車はもちろんのこと、自動車(特にバス)も2階建がブームでありました。そして、当時は通称ジャンボ機の愛称であったB747シリーズも人気を博していました。更にこの当時の子どもたちの乗り物の絵は大半がダブルデッカータイプのものが多いのも特徴的でした。そして時代は変わり今現在では合理性を求め傾向があるせいか、乗り物はコンパクトタイプを求める傾向があるようです。新幹線も300系以降の車両は車体高を大幅に低くなり、バスでは国産ダブルデッカー(エアロキング)が製造を取りやめたり(その代わり海外[主に欧州を中心に]から輸入)、そうかと思えばこんどは中小型タイプのバス(いすゞエルガミオシリーズや日野ポンチョシリーズなど)が人気を博したり、旅客機ではジャンボことB747シリーズが国内から完全撤退してしまったと思ったら今度はLCCのブームと需要ででA320シリーズやB737シリーズなどの小型タイプのジェット機が大量に拡大し、更にはこれよりも小型の超小型タイプ(定員100人未満)のジェット機も数多く登場しました。まとめとして、今の時代では大きくて大容量よりも小型でコンパクトを求める傾向が強いのではと感じます。
私は今でも乗り心地のベストは100系の2階だと思っています。あれ程の静かさや揺れの少なさは、今でも懐かしく感じます。特にあの後に登場した300系の揺れの酷さに、尚更、100系の乗客を優先した設計を感じました。重い車両が細かい振動を抑えていたようにも思います。結局、JR東海の運用効率化のための軽量化高速化の方針に合わなかったのですが、それでも、乗り心地ベスト車両は100系の2階であることは強調したい。このため、これに乗った時は東京大阪間を2時間位に感じていました。体感というのも列車旅の重要な要素です。