「ズレてもホームドア開けます」京王線の車内に刃物男の“事件”再現訓練 課題も浮上

昨2021年10月末、走行中だった京王線の列車内で男が乗客を切りつけ放火するという事件が発生しました。これを受け対策強化に乗り出した京王電鉄は、事件と同じ状況下での訓練を実施。“開かずのホームドア”も連携により解決させました。

車掌は「自ら」緊急事態発生を判断

 京王電鉄が2022年4月21日(木)、走行中の列車内で「車内暴漢対処訓練」を実施。これは、昨2021年10月31日に同社の京王線で発生した列車内での傷害事件を受け、同じような状況下での対応、連携動作を確認するためです。訓練には、調布警察署および調布消防署の署員も参加しました。

 特急列車(訓練)は東府中駅を発車。次の停車駅である調布駅を目指し、スピードを上げていました。先頭8号車の座席はほぼ埋まり、立ち客が見られる程度の乗車率です。すると多磨霊園駅を過ぎたあたりで突然、「なんだ、オルァ!」という怒声が聞こえました。見ると、1人の男が凶器を持って暴れているようです。

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ホーム上で警察官と対峙する刃物男(2022年4月21日、大藤碩哉撮影)。

「なに俺の前に立ってんだ!」

 男は凶器で、まず前に立っていた男性を刺しました。付近の乗客から悲鳴が上がります。

「お前も、なに見てんだよ!」

 男はさらに左隣にいた男性の腕を切りつけます。負傷した男性2人はその場にうずくまってしまいました。ほかの乗客は「落ち着きましょう!」と叫び男の静止を試みますが、「お前ら、かかって来いや!」と声を張り上げ凶器を振り回します。ケガをしていない乗客は一斉に7号車側へ退避しました。

 ほどなくして、車掌による車内放送が入ります。「複数箇所で車内非常通報装置の操作を確認しました。操作されたお客様、ボタン付近にマイクがございますので、マイクに向かってお話しください」。しかしこの時、緊迫した車内で状況を的確に話せる乗客はいない模様でした。車掌は、複数の車内非常通報装置が同時に扱われたのに応答がないことから、「自ら」緊急事態発生を判断。本来ならば通過する飛田給駅への緊急停車を決定します。

【写真で見る】響く怒声 暴れる刃物男 「車内暴漢対処訓練」の様子

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4件のコメント

  1. 素晴らしいの一言につきます。
    最大の問題である「車掌が把握できない状況では避難に時間を要する」という点の対処ができるようになりました。
    車内放送で車掌が異常事態を検出していることがわかれば、乗客もドアコック操作などで自力救済を試みなくなり、ひいては全体の避難が円滑になります。
    事件自体は暴漢によるものでしたが、車両火災を検出する方法が無い中で、乗客からの聞き取りができない場合の対応が定められていなかったことが問題の本質であったと思います。

    暴漢対応だけに留まらずきちんと問題点を深掘りする安全文化が京王にも警視庁にも根付いているのだと思います。

  2. 日本一安全な鉄道を目指す必要は無いと思う。私の主観だが、他路線は存じ上げないが、京王は性善説で成り立っていると感じている。その前提であらば、ホームドア設置は推進して欲しいけど、犯罪対策というか人災対策は鉄道会社がやらねばならぬとは思えないし、その責を負わねばならないとも思えない。

  3. 記事の本筋からそれましてすいません。
    駅名「多摩霊園」は正しくは「多磨霊園」です。麻の下の字は手では無く石です。
    駅名となっている都立多磨霊園は、当時の北多摩郡多磨村に開設された公園墓地、ということです。

    • ご指摘ありがとうございます。
      修正いたしました。