「軽井沢事故と変わらない」富士山の観光バス横転事故 危険な道がバスの定番ルートに

富士山麓の「ふじあざみライン」で発生した観光バスの横転事故。その背景を取材していくと、2016年の「軽井沢スキーバス事故」と同じ構図が見えてきました。ドライバーは、そのルートを選ばざるを得なかった事情があります。

通行料金の節約のため? 「あざみライン」で事故

 静岡県小山町の県道で2022年10月13日11時50分頃、観光バスが横転。ツアー参加者の女性1人が死亡、残り35人が重軽傷を負った交通事故で、運転手の26歳男性が逮捕されました。事故直前に運転手が「ブレーキが利かない」と話すのを添乗員が聞いたと公表されましたが、事故発生の背景は2016年の起きた「軽井沢スキーバス転落事故」とまったく変わらない、と訴える声を聞きました。

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ふじあざみラインが通じる富士山須走口五合目(画像:PIXTA)。

「事故が起きた『ふじあざみライン』(以下あざみライン)は、いったん上り坂でバスやトラックを止めてしまうとローギアでも発進が難しい。平らなところまで下がらないと発進できない。それほど急勾配の道。その上にヘアピンが続くので、本当はバスで走れないような区間なのです」

 こう話すのは、都内で30年以上貸切バスに乗務し、経営にも携わる運行管理者です。

 あざみライン(=静岡県道150号足柄停車場富士公園線)は、約60年前に県道指定。「記録がないので詳細は不明」(県道路保全課)との回答でしたが、もともとは自衛隊車両が演習場への往来に使っていた道路という話があります。それがなぜ富士山の定番のような観光道路に変わったのか。そこには旅行業界特有の重層構造があると言います。

「あざみラインを使う理由は一般道だからです。ツアー会社からすると、代替の有料道路の通行料金は、ツアー料金で1人当たり数百円の上乗せになる。それなら無料の道路を走ったほうがいい。私の会社に依頼してくる場合でも、有料道路を避けたいからあざみラインへと言われることはある。ただ、うちではこの区間は特別手当のドライバーしか行けないので1万円高くなりますと、はっきり言う。そうすると、スバルラインの有料道路のほうが少し安くなるから、そっちを使ってもらえる」

 あざみラインが人気となる前は、有料道路の富士スバルライン(以下スバルライン)が使われていました。

「スバルラインは20年ほど前、約3000円で往復できた。それが10年ほど前に約5000円に。今は8040円と値上がりした。それに加えて、もっと大きな理由があるのです」

 富士山観光では登山客を送迎する場合、乗客が登っている間、バスは一度下山して、再び乗客を迎えにいきます。

「この2度の往復を1往復の通行料金でまなかう往復証明書が配布されていたのですが、廃止されてしまった。目に見える通行料金の値上げに加えて、実質の値上げはかなり大きかった。そのことが、通りやすく、安全なスバルラインからあざみラインを選ぶようになった理由。通行料金の問題なのです」

 軽井沢スキーバスも、高速道路を避けて一般道を走行中に転落事故が起きました。

【地図】現場のすごい「クネクネ道路」っぷり

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コメント

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1件のコメント

  1. 通行料が大幅に値上げされたなら、バスツアーも料金を改定せざるを得ないです。船もバスも安くて安全は、通用しないです。会社の負担を運転手さんだけに押し付けるやり方は、完全に間違っています。