「史上最悪の作戦」インパールを走ったトラックの車種は? 4WDじゃない!? 泥濘を駆けた“輸送任務”の実態
鹵獲した車両を改造 手記には「ジープ」の文字
日本でトラックは、関東大震災直後の復興から急速に必要となり、輸入車が格段に増えていきました。フォードとGMは日本市場の開拓を睨み、国との思惑が合致するかのように、フォードが1924(大正13)年、GMが翌年に日本法人を立ち上げ、日本での生産と販売を開始。国産車やヨーロッパの輸入車と比較して、フォードとシボレーの品質は安定して安価で、かつ性能も良く、あっという間に国内へ広まります。
軍用も性能が良いクルマに越したことはなく、有事に数が揃えられるフォードとシボレーを徴用し(購入もあったという)、満州事変や1933(昭和8)年の熱河作戦に投入しました。
一方の国産車は、1918(大正7)年に軍用自動車補助法が制定され、国内メーカーは陸軍の要求に沿った性能のトラックを開発しながら発展。平時は民間で使用しながら、有事の際に徴用できるものを世に広めていきました。
代表的なものは、いすゞTU10型(九四式6輪自動貨車)やTX80型(一式四輪自動貨車)、日産80型/180型、トヨタKB型です。とはいえ、四輪駆動や六輪駆動車は機構も複雑で、少数生産か試作に留まりました。
ところで、手記には「ジープ」「3/4屯トラック」の記載が散見されます。これらの自動車は連合軍が遺棄した車両を捕獲した鹵獲車です。若干修理したり複数台を1台に仕立て直したり、部隊で使用しやすいよう改造を施した自動車もありました。
行動概要記録では、「昭和19年4月中旬、第33師団がトンザン、シンゲル付近で捕獲したる敵英軍第17師団のジープ及び3/4屯トラック約60輌を在テイデム自動車廠松崎部隊より受領」とあり、3/4屯トラックは「CMPトラック」と思われます。このトラックは4輪駆動タイプも存在し、フォードとGMシボレー製でした。
なおほかの自動車部隊でも、ジープやトラックを大量に鹵獲していました。日本から輸送してきた徴用の商用トラックよりも、現地調達した鹵獲車のほうが性能的に優れて重宝したようです。イギリス軍と戦いながらイギリス軍車を捕獲して重宝する、なんとも皮肉なことです。
詳しくは、「乗りものニュース」の『祖父は「インパール作戦」を生き延びた〈後編〉 泥地獄を走った「トラック」は四駆ではない!? 敵のジープに愕然と羨望』に掲載しています。
【了】
Writer: 吉永陽一(写真作家)
1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。
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