「世界最強戦車」台湾に到着! 島国でどう使う? エイブラムスが選ばれたワケ

島国である台湾に、アメリカ製のM1A2エイブラムス戦車が到着しました。対中国(人民解放軍)を念頭に置いた導入です。しかし台湾軍が、ドイツのレオパルト2や韓国の最新K2ではなく、重量級のエイブラムスを選んだ理由は何でしょうか。

中国の圧力を跳ねのけた?トランプ政権再び

 その点、アメリカには台湾関係法があり、台湾に兵器を供給するほとんど唯一の国です。事実上アメリカ製M1A2しか選択肢は無かったのです。台湾軍はアメリカ製兵器を長年使用しており、アメリカ製戦車の方が既存の兵站や訓練体制に適応しやすい事情もありました。

本当に欲しいのはM10ブッカー戦闘車?

 アメリカは2022年に、M10ブッカー戦闘車を採用しました。アメリカ陸軍はM10を、いわゆる主力戦車(MBT)ではなく装甲歩兵支援車両や戦闘車と呼んでいます。105mm主砲を搭載し、射撃統制システムや通信システムはM1A2の最新バージョンSEPv3と同等だとされます。

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中国大陸と台湾は近いとはいえ、水陸両用車で渡洋はできない。水上航行しながら30mm機関砲を射撃する中国人民解放軍の05式水陸両用歩兵戦闘車(画像:中国人民解放軍)。

 一方の防御力については装甲配置が不明であり、重量が38~42tに抑えられていることから推測するしかありません。事実上の軽戦車や突撃砲とされていますが、アメリカ陸軍がこの呼び方を拒絶しています。M10がMBT並みに扱われることを恐れているためといわれます。

 M10は小型軽量で扱いやすく、イニシャル、ランニングコストも抑えられます。まだアメリカ本国でも低率初期生産が始まったばかりですが、台湾の国情にはマッチしており、取得に動くのではないかという指摘があります。

 また、1000両以上ある台湾の戦車戦力を、全てM1A2Tに更新するのは非現実的です。そこでM10を導入して「ハイ・ロー・ミックス」とする選択肢が挙げられます。中国の圧力にも関わらすM1A2の売却を決定したのは2019年のトランプ政権で、アメリカ製戦車が新規導入されるのは30年ぶりのことでした。そして2025年にまた、トランプ政権が始まります。アメリカ、中国、台湾がどのように動くのか注目です。

ついに上陸! M1A2の台湾バージョン(写真)

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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