タイへ渡った「北斗星」の機関車 トラブル連発の根っこに「整備方針の違い」も “チーム日本”の試練は続く
JR北海道で活躍した寝台特急「北斗星」色のDD51形は室蘭港からタイへと渡り、インフラ工事会社が請け負うタイ国鉄の複線化工事に従事しています。日本の鉄道ファンのサポートで、幾度となくピンチを乗り越えてきました。
喜ばしい南本線の竣工 しかし新たな懸念も?
ベストな策は、図面をもとに現地で交換部品を製造して蓄え、的確に保守をしておくことです。チーム51ではAS社のスタッフを育成していこうと、ときには交換部品の図面を起こし、国鉄時代のDD51マニュアルなどは英語へ翻訳したうえでスタッフへ手渡しました。同時にチーム51の各メンバーの対応では限界があるため、AS社へ予備部品の一括提供も提案しています。

「DD51のエンジニアの方が指摘し、我々の知らないところを教えてもらいました。トレーニングもできるので大変良いプロジェクトです」とAS社スタッフは感謝しています。
ただし、これから懸念とされる事柄もあります。DD51は現在、ノンプラドックのデポ常駐ですが、南線の複線化工事は終わりに近づいてきており、次の拠点は東北部へ移ります。
タイ国鉄とAS社との契約では、南本線の工事完了後しばらくはノンプラドックに常駐しますが、同時に東北部も管轄しなければなりません。DD51はバラバラに配置されると、それぞれの地点に整備デポが必要となります。2両離れた地点でのトラブル対処は、相当の困難が予想されるため、現地スタッフが的確な整備と保守をマスターして実施することが大切です。
AS社はトレーニングを受け、機関室内の錆び取り、適切な配管処理など、作業がアップデートされてきました。チーム51は今後も2両のDD51をサポートし、なるべく今のうちに整備して、不良個所を整えていきたいと考えています。
2025年も、海を越えた整備の手が休まることはなさそうです。
Writer: 吉永陽一(写真作家)
1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。
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