日本海軍が建造した「空前の巨大空母」とは 元々は“世界最強の戦艦”になるはずだった悲運の切り札

日本海軍の空母「信濃」は、当時史上最大の空母として登場しながら、未完成のまま竣工後わずか10日で沈没するという悲劇に見舞われています。どのような艦艇だったのでしょうか。

未完成で本来の防御力を発揮できず沈没

 ただし艤装工事などは残した状態であり、日本海軍は未完成の「信濃」を空襲の激しい横須賀から呉へ移し、残工事を進めようと考えます。

 呉への回航を巡っては、航行ルートや時間帯について「信濃」艦長の阿部俊雄大佐と、護衛する駆逐艦の艦長らのあいだで議論が交わされ、夜間に外洋を航行することが決定。11月28日午後、わずか3隻の駆逐艦「浜風」「磯風」「雪風」を護衛として「信濃」は横須賀を出港しました。この時、貨物として特攻兵器「桜花」を50機搭載していたと言われています。

 航行中も艦内で工事は続いており、機関部も完成していないため、最高速度27ノット(50km/h)も発揮できない状態でした。外洋に出ると、艦隊は早くもアメリカ軍の潜水艦「アーチャーフィッシュ」によって発見、追跡されます。日付が変わった29日の午前3時過ぎ、「アーチャーフィッシュ」は6本の魚雷を発射、うち4本が「信濃」の右舷に命中しました。

 本来の防御力が発揮されれば、この程度では沈まなかったかもしれませんが、防火防水扉を閉鎖することで浸水・延焼被害を抑える「水密区画」などが未完成だったほか、気密試験が省略されていたこともあり、「信濃」は徐々に傾斜度を増していきます。加えて、乗員も乗艦したばかりのため艦内に不慣れで、満足なダメージコントロールを行うこともできませんでした。

 また、護衛にあたった3隻の駆逐艦は、レイテ沖海戦後に日本本土に戻ってきたばかりで、ソナーなど対潜装備も損傷しており、万全の状態ではありませんでした。

 駆逐艦の曳航作業もむなしく、「信濃」は未明に沈没。位置は和歌山の潮岬沖、およそ50kmの地点です。いわゆる「南海トラフ」の深海部に沈んだとみられており、詳細な沈没位置は現在も不明で、船体も未だ発見に至っていません。

「信濃」は竣工した時期が遅すぎ、戦局に貢献できるような舞台は既になかったほか、数々の悪条件が重なって本来の能力を発揮できない悲運に見舞われました。なお、「信濃」は原子力ではない通常動力型空母としては、長らく世界最大(満載排水量7万1890トン)でしたが、現在は今年就役した中国海軍の空母「福建」(満載排水量8万トン)が世界最大となっています。

 ちなみに、「信濃」を建造した横須賀海軍工廠の第6船渠は終戦後、アメリカ軍が接収。在日米軍の横須賀海軍施設ドックとなり、現在も使用されています。

 

【画像】これが空前の巨大空母「信濃」に着艦した戦闘機です

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