米・イスラエルの「斬首作戦」はなぜ即座に成功したのか? 現代空軍に必須の能力「キルチェイン」とは

2026年2月末、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃で起きたハメネイ師殺害。過去に米ロも失敗した困難な「斬首作戦」は、なぜ開戦直後に成功したのでしょうか? その鍵を握る現代空軍の情報ネットワークと「キルチェイン」の全貌を解説します

1日がかりの作戦が「わずか数分」! 現代航空戦の要「キルチェイン」とは

 決断される(命令が下る)と、その情報は空中の航空機へ即座に共有されます。戦闘機のパイロットは新たなミッションデータを受信し、飛行中であっても攻撃目標を更新できるのです。目標座標、攻撃角度、兵装の選択までがデータリンクを通じて提供され、航空機はほとんど即応的に攻撃行動へ移ることが可能です。

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イラン攻撃のために爆装を施されたF-15「イーグル」。イスラエル空軍のF-15は対地攻撃が可能な仕様へ改修されている。(画像:イスラエル空軍)

 この一連のプロセスは軍事用語で「キルチェイン」と呼ばれます。目標の発見、識別、決断、攻撃、そして戦果確認までを一本の連鎖として結び付ける概念です。かつては日単位で進行していたこの連鎖が、現在では瞬時(秒単位)にまで圧縮されるまでに至りました。

 今回の斬首作戦も、おそらくはこのキルチェインの高速化によって実現したと考えられます。情報機関が得た位置情報がネットワークを通じて指揮系統に伝達され、即座に攻撃判断が下され、空中で待機していた戦闘機に目標が割り当てられます。このような流れで、極めて短時間のうちに精密誘導兵器(「ブルースパロー」空中発射弾道ミサイル)が投下されたと考えられます。

 結果として、政治指導者(今回はハメネイ師)の位置が特定されてから攻撃までの時間は、極めて短かったのではないでしょうか。恐らく数分の範囲だった可能性すらありえます。

 ここに示されているのは、航空攻撃という軍事行為そのものの変質です。かつての爆撃は、周到に準備された計画的作戦でした。ですが現在の爆撃は、情報ネットワークによって即座に実行される「リアルタイム戦闘」へと変貌しています。

 いまや航空戦力は巨大な情報システムの一部となっており、センサーが目標を見つけ、ネットワークが判断を伝え、航空機が瞬時に攻撃する。その速度と連携こそが、現代空軍の真髄と言えるでしょう。今回のハメネイ師暗殺の作戦成功は、その真の戦闘力が存分に発揮された結果だったと捉えることができるのです。

【イスラエルの切り札?】実戦で使われたかもしれない「空中発射弾道ミサイル」です(写真で見る)

Writer:

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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