英揚陸艦「アルビオン」北東アジア派遣のねらい 英海兵隊は何しに地球の裏側へ?

イギリス海軍の揚陸艦「アルビオン」が2018年4月、北東アジアに展開しました。そもそもどのような艦で、そして今回の派遣目的はどこにあるのでしょうか。

イギリスのアジア太平洋地域に対するまなざし

 実は、1年のあいだにこうして3隻ものイギリス海軍艦艇がこのアジア太平洋地域に展開するというのは非常に稀なことです。また、2020年代から本格的に運用が開始される最新鋭の空母「クイーンエリザベス」も、アジア太平洋地域におけるパトロール活動を行うとイギリスのジョンソン外相が以前発言しています。なぜイギリス海軍はこのように急速にアジア太平洋地域への艦艇派遣を強化し始めたのでしょうか。これにはおもに以下のふたつの理由が考えられます。

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「アルビオン」の姉妹艦「ブルワーク」。同型艦はこれら2隻のみ(画像:dennisvdwater/123RF)。

 ひとつは、近年の中国による南シナ海における海洋進出への対応です。中国はその強大な経済力と軍事力を背景に、南シナ海における人工島の造成や軍事的活動の強化などによって、周辺国との軋轢(あつれき)を生じさせています。

 こうした中国による活動は、イギリスにとっても無関係ではありません。南シナ海に面しているブルネイやマレーシア、シンガポールといった国々はイギリスと安全保障上の協力関係にあり、特にブルネイには少数ながら数百名規模のイギリス軍部隊が駐留しています。また、南シナ海は世界中の大型タンカーや貨物船が利用する海の道「シーレーン」となっていて、ここで何か問題が発生すれば世界経済に大きな影響を及ぼしてしまいます。こうした背景から、このような中国の強硬な姿勢に対して、イギリスはアメリカや日本と歩調を合わせて対抗していく考えを示しているのです。実際に、先に述べた「アルビオン」「サザーランド」「アーガイル」、さらに空母「クイーンエリザベス」は、中国に対抗するような形での南シナ海における活動の実施が予定されているとの報道もあります。

 もうひとつは、アジアにおけるイギリス製兵器の輸出拡大です。近年アジアは各国の軍備拡張が盛んで、兵器輸出のための大きな市場になっています。そこでイギリスはこうした国々への兵器輸出を視野に、アジア太平洋地域に実際に軍艦や戦闘機を派遣することで自国の軍事的存在感を示し、こうした軍備拡張を図る各国に対して自国兵器のアピールを行っていると考えられます。特に島国が多いアジア太平洋地域では、大小さまざまな大きさの艦艇から、そこに搭載する装備品に至るまで幅広い海軍関連の兵器需要が期待できるため、今回の「アルビオン」のようなイギリス海軍艦艇の派遣は非常に大きな意味を持つことになるでしょう。

【了】

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Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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