検査でバラされたC58 火のない貴重な姿のSLを間近で観察

紅葉とSL、ちょうど今が見ごろ?

「連結器はこうやって開くんですよ。炭水車は水の方が多いのです」

 検修員は機関車の構造や参加者の質問に答えながら、239号機の周囲をぐるっと一回りします。我々参加者も説明に耳を傾けながら、検査中の珍しい姿をカメラに収め、あっという間に1時間が過ぎていきます。参加者と検修員が語らい、和気あいあいとした空間となっていました。

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陸中大橋駅を発車し、終点の釜石駅を目指す「SL銀河」。目を引くのが紫色のナンバープレートで、239号機の新製77年の喜寿を祝って装着されたものだ(写真提供:福本圭介)。

 もっとこの機関車を知ってもらおうと、「SL銀河」に携わる人々が協力しあい企画・開催しているんだなと、一参加者としてなんだか温かい気持ちになってきます。じっくり観察しながら現場の声を聞き、改めて1台の機関車を動かす大変さが伝わってきます。

 見学会に参加してからだいぶ経った初秋、私は「SL銀河」を沿線で撮り、そして途中から乗車してみました。あの分解されていた239号機がこんなに力強くドラフト音を響かせて走っているのかと、ひとり感銘を受けました。

 東北復興の支援と地域活性化を目指し2014(平成26)年から走り始めた「SL銀河」は、客車老朽化などの理由で翌2023年春に運行を終了する予定です。その後はどうなるか、現在のところまだ判明していませんが、検修員たちのひたむきな笑顔と取り組みを肌で感じると、何らかの形で存続して欲しいと願ってやみません。この記事が配信される頃には秋も深まり、釜石線はちょうど紅葉とSLが撮れる、良い季節となるでしょう。

【了】

【写真】C58形蒸気機関車の各種パーツ

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Writer: 吉永陽一(写真作家)

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。

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