ヒトラーが生んだ「世界的名車」なぜユダヤ人が協力? 独大企業の飛躍にかつての敵が尽力したワケ

フォルクスワーゲン「ビートル」は、もともとドイツの独裁者ヒトラーの「国民車構想」から生まれました。同車が「20世紀を代表する小型大衆車」と形容されるまでに飛躍したのは、2人の外国人の尽力がありました。

ユダヤ人が米国での商業的な成功の要に

 この広告代理店は「広告はアートである」と主張する、社長兼クリエイティブ・ディレクターのウィリアム・バーンバック率いる会社でした。運命のいたずらなのか、驚くべきことに彼はナチスに迫害されたユダヤ人でした。しかし、彼はフォルクスワーゲンからの依頼に対し、部下の中でもエース級アートディレクターのヘルムート・クローネに仕事を任せることにします。

 フォルクスワーゲンの広告としてクローネが打ち出した代表的なキャッチコピーは、1959年の「Think Small」です。当時の広告はできるだけ多くの商品情報を提供することに重点を置き、派手で目立つ写真とともに製品の魅力が事細かく書かれていたのに対し、フォルクスワーゲンの広告は中央やや左上方に小さく「タイプ1」の写真を配置し、余白をたっぷり使ったもの。そして、下方にはやや自虐的ながらユーモアを交えて、大きなクルマを肯定するアメリカの消費文化を批判するコピーが並びます。

 フォルクスワーゲンの広告は毎回このようなテイストで展開され、インテリ層を中心に新しい広告が登場するたびに話題となりました。

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フォルクスワーゲンの窮地を救ったイギリス陸軍のアイヴァン・ハースト少佐(画像:フォルクスワーゲン)。

 この広告が功を奏したのか、1960年には初めてアメリカへの輸出台数が10万台を超え、以降、1970年代に日本車が台頭するまでアメリカ市場の小型車はフォルクスワーゲンが席巻し続けました。

 冒頭に記したように、フォルクスワーゲン「タイプ1」はヒトラーの思惑によって生まれた国策商品です。そのため、第2次世界大戦でドイツが負けたことで、その存在は消えてもおかしくなかったはずです。

 しかし、対戦相手のイギリス軍人と迫害の対象であったユダヤ人、かつての仇敵によって商業的な成功を収め、世界を代表する工業製品にまで上り詰めたのです。その歴史は、まさに「皮肉」としか言いようがないでしょう。

【了】

【敗戦の4年後】これがアメリカに最初に輸出された「ビートル」です(写真)

Writer:

「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に

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