10年前の大議論「ホルムズ海峡に機雷が敷設された際の日本の対応」が現実に…! 自衛隊派遣できるの?できないの? その「理屈」とは(前編)

イランがホルムズ海峡を事実上閉鎖し、世界のエネルギー供給に懸念が広がっています。この事態を受け、かつて国会で議論された自衛隊の活動を可能とする「存立危機事態」について、あらためて考えます。

なぜホルムズ海峡が「日本の危機」に?

 その理由は、まさに2015年の国会論戦において、当時の安倍総理大臣が行った次の答弁で明らかにされています。

「仮に、我が国が輸入する原油の8割、天然ガスの3割が通過する、エネルギー安全保障の観点から極めて重要な輸送経路であるホルムズ海峡に機雷が敷設された場合には、我が国に深刻なエネルギー危機が発生するおそれがあります。我が国に石油備蓄はもちろん6カ月あります。しかし、機雷の除去ができなければ、ずっとそこには危機があり続けるのも事実でありまして、誰かが機雷を除去しなければならないということであります。

 存立危機事態については、あくまでも我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生を前提とするものでありますが、例えば、石油などのエネルギー源の供給が滞ることによって、単なる経済的影響にとどまらず、生活物資の不足や電力不足によるライフラインの途絶が起こる。

 例えば、病院への電力供給も滞ってくる可能性も出てくる、自家発電すら危うくなってくるという状況も起こり得るということも全く考えられないわけではないわけでございまして、国民生活に死活的な影響、すなわち国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が生じるか否かを総合的に評価して、状況によっては存立危機事態に該当する場合もあり得ると考えるわけでございます」(第189回国会 衆議院 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会 第3号 平成27年5月27日 安倍晋三 内閣総理大臣答弁)

 つまり、日本が輸入する原油の8割、天然ガスの3割を輸送するタンカーが、ホルムズ海峡を通過しており、もしこれが滞れば、単なる経済的な影響にとどまらず、国民生活に死活的な影響、すなわち国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が生じるため、これが存立危機事態に該当し得ると整理したわけです。

 そして、この時の日本政府による国会答弁では、どこかの国が別の国に対する攻撃の一環としてホルムズ海峡に機雷を敷設した場合、その機雷を処理することは武力の行使にあたり、かつ日本が攻撃を受けたわけではないことから、集団的自衛権の行使が必要と説明されていました。そのため、こうした状況に対応するためには、存立危機事態の認定が必要になったというわけです。

 それでは、現状でホルムズ海峡における状況が存立危機事態に該当し得るのでしょうか。筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は、それは難しいと考えます。その理由は、後編にて詳しく説明したいと思います。

(後編に続く)

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Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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  1. 石油の1滴は血の1滴