年間175億円 新幹線の“線路使用料”どうなる? 国「もっと払えるはず」vs JR「過去の話と違う」それぞれの言い分

整備新幹線の貸付料をめぐり、国と、運行を担うJR各社の間で、開業31年目以降の考え方について見解が分かれています。「できるだけ多く払ってほしい」国と、「安くしてほしい」JR側、それぞれの言い分を見ていきます。

過去の「合意文書」も論点に

 接続利益(新たな線区が開業することによって既存線区に追加的に生じる収益)の扱いも見解が分かれます。現状では営業主体の営業エリアのみが関連線区として受益算定の対象ですが、2社にまたがる北陸新幹線、東北新幹線と北海道新幹線は延伸開業が既存線区に大きな影響を与えます。

 JR東日本は北陸新幹線長野~金沢間延伸開業、北海道新幹線新青森~新函館北斗間開業にあたり、「自社エリアに隣接する区間」として例外的に貸付料の増額を受け入れましたが、経営コントロールが及ばない他社区間には貸付料は発生しないとの立場です。

 つまり「他社エリアの新幹線」である敦賀~新大阪間、新函館北斗~札幌間が開業してもJR東日本の貸付料は一定です。しかし、実際には同社区間の旅客流動は根底から変わるでしょう。もし全線同時開業だったら新大阪、札幌まで「隣接する区間」として認めたでしょうか。整備方法によって変わってしまうのだとしたら違和感があります。

 大きな争点が整備新幹線の駅で展開する不動産、ホテル、商業店舗など関連事業の収益の扱いです。国はこれも受益に算定すべきと主張します。しかしJR側からすれば、公共事業の整備新幹線とは異なり、関連事業は自己資金で行った投資です。後から貸付料の対象とするのは、民間企業の投資判断を覆すものであり、乱暴な議論です。何もしない方が得になってしまったら駅は発展しないでしょう。

 話をさらにややこしくするのは、JR東日本が1991(平成3)年に当時の運輸省と交わした「合意文書」の存在です。「現行制度の受益に基づく貸付料支払いは開業後30年間で終了すること」「31年目以降の取扱いは施設の状態に見合った維持管理等に要する費用を根拠とすること」など、JR側の主張に沿った内容で合意しているのです。国の主張は正式に交わされた行政契約を反故にするものです。

 とはいえ、考えなければならない問題もあります。例えば30年定額の貸付料は、物価安定・低金利の過去30年間は問題になりませんでしたが、今後のインフレ・高金利時代においては、定額では目減りしていきます。物価に連動した貸付料の変化はあってしかるべきでしょう。整備新幹線から得られる「投資の果実」は、公共事業である以上、国民に正当に還元されるべきというのは筋論であり正論です。

 国交省・財務省は国民の代表として、JRは民営企業として株主と利用者のため、それぞれに通すべき筋があります。しかし、議論にも筋があります。これまでの合意を根底から覆してしまっては、まとまるものもまとまりません。タイムリミットが迫る中、どのように着地するのか、できるのか、今後の動きに注目です。

【図表で整理】貸付料をめぐる八つの論点

Writer:

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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