訓練開始した陸自オスプレイ「背中のコブ」は何? 米軍仕様にはない日本独自装備とは

運用経験が増えれば日本独自の装備も増えていくかも!?

 続いて丸い方、コブのようなものは衛星通信アンテナになります。大気圏外にある「スーパーバード」や「きらめき」などの通信衛星を利用して交信するためのもので、陸上自衛隊が保有する航空機では、CH-47JA「チヌーク」輸送ヘリコプターの海外派遣仕様機や、同じく「チヌーク」の沖縄仕様機、LR-2指揮連絡機、EC-225LP要人輸送用ヘリコプターなどにも同様の衛星通信装置が搭載されています。

 なお、これら従来の陸上自衛隊の航空機に搭載されている衛星通信用アンテナ(ドーム)と比べると明らかに大きいため、もしかしたら海上自衛隊のP-1哨戒機や航空自衛隊のC-130H輸送機などに搭載されているのと同様のアンテナかもしれません。

この衛星通信装置があれば、たとえ洋上や海外などの遠隔地で、駐屯地や基地など拠点になる場所から離れて活動していても、確実に通信が可能です。HFアンテナと違って不感地帯は発生せず、通信衛星を使うため、東京の防衛省を始めとして日本本土の駐屯地や基地と連絡を取ることができます。また略語や暗号を使用しないと交信内容が傍受されるHFと違い、通信内容の秘匿も可能です。

 こう聞くと、衛星通信アンテナさえあればHFアンテナは必要ないように思えます。なぜ2種類のアンテナを用意したのでしょうか。これについては、もし有事が発生した場合、仮に宇宙にある通信衛星が破壊されても交信できるようにしているものと考えられます。

ちなみに、衛星通信用のアンテナは実はアメリカ軍の「オスプレイ」にも装備されています。陸上自衛隊の「オスプレイ」とは形が違うため判別しにくいものの、アメリカ軍機も衛星通信は可能です。

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アメリカ海兵隊が使用するMV-22「オスプレイ」。陸上自衛隊の機体が装備するような大型アンテナは設置されていない(画像:アメリカ海兵隊)。

 日本人の手で運用が始まった「オスプレイ」。これから先運用をしていくなかで、ノウハウの蓄積によって日本独自の装備が徐々に増えていくことになると思います。運用実績が増えれば増えるほど、ほかの航空機などと同様に、個々の軍ごとに要求する能力が異なっていき、同じ機体でも装備に差がでて様々な派生型、タイプの違いが出て来ることでしょう。

【了】

【写真】既存のCH-47JA「チヌーク」ヘリと並んだ日本仕様の「オスプレイ」

Writer: 斎藤大乗(元自衛官ライター/僧侶)

木更津駐屯地で5年間ヘリコプターと共に暮らした元自衛官。自衛官時代の経験を生かして雑誌やアニメに登場するヘリコプターの監修を行う。現在は実家のある日本最北の礼文島で僧侶をしながら記事を書いている。

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