食パン形電車はもう古い? 通勤電車の「顔」がシュッとした流線形になってきた理由

通勤形電車の先頭車両は、食パンのような形状の切妻構造が一般的でしたが、首都圏では近年、流線形タイプが増えています。新幹線や特急列車のように特別速く走るわけでもなく、空力面での配慮が不要なはずですが、なぜでしょうか。

のっぺり顔から変化 首都圏の通勤形電車

 食パンのような形状の切妻構造が一般的だった通勤形電車が変わってきています。首都圏では近年、流線形タイプの車両が増えているのです。

 流線形の車両といえば新幹線が思い浮かぶかもしれません。200km/h以上の高速で走行するため、騒音対策や空力性能の観点から先頭が流線形になっています。一方で通勤形電車は停車駅が多いぶん、新幹線や特急列車のように速く走る必要はなく、空力対策で先頭を流線形にする必要性はありません。営業最高速度は最速でも、つくばエクスプレスの130km/hです。

 通勤形電車に必要なデザインは「輸送力の確保」。先頭部を流線形にする余裕があるなら、国鉄103系電車のように切妻構造にして、少しでも定員を確保するのが「正解」でしょう。

Large 210927 streamline 01

拡大画像

JR西日本(国鉄)の103系電車と東京メトロ18000系電車。先頭車両の形状はまるで異なる(2016年、児山 計撮影・2021年、伊藤真悟撮影)。

 もし定員を減らさずに流線形で先頭車をデザインすると、中間車よりも全長が50cm弱伸びます。特に列車の分割や併結を行う場合、流線形の先頭車が編成の中間に入ると、ほかの列車と扉の位置が合わなくなるという問題が生じます。また、ホームドアが整備された駅でも運用が難しくなるでしょう。

 しかし近年は、列車運用の合理化や要員の削減という観点から分割や併結があまり行われなくなり、この制約を考えなくてよい路線が増えています。ホームドアにも大開口タイプが登場しています。

 加えて鉄道会社の考え方も変わりました。かつて鉄道会社の看板列車は特急形車両でした。特に有料特急を運行している鉄道会社は意匠や設備に工夫を凝らし、会社のイメージリーダーとして宣伝に使ってきました。しかし有料特急は主に、沿線外から自社の観光地などへ向かう人に利用してもらうための列車であり、日常的に利用する通勤通学客へのアピールには、あまり注力してきませんでした。

【速そう?】先頭が特急列車っぽい通勤形電車いろいろ

最新記事

コメント

Leave a Reply to Mc40 Cancel reply

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

4件のコメント

  1. 食パン顔 がちょっと前までの標準で
    運用や要員合理化で分割併合を廃止したから顔が自由にできるようになった というが

    京王8000のように分割併合を前提にしながら 食パンではない物 はあるし
    分割併合して車両に貫通路があった場合でも幌を繋がない前提だった京王や小田急なら
    分割併合=顔の自由化 とはならない

    そして国鉄73型 101系 103系 東急7000 8000 8500 … といったような食パン顔 の物は両数こそ多くても系列としては少数派で
    国鉄でも私鉄でも 貫通型なら111系のように後退角をつけた顔 の方が一般的で
    非貫通なら 湘南型顔
    なんていう時代が長く続いていたような…

  2. 輸出市場向けのショーケースなのか、発注者からの要望なのか。 

    九州ではH社の提案なんだか切妻の通勤電車が多いが。 

    J西は中間運転台に転落防止外幌をつけているから機能的ではないデザインだ。 

    小田急の新3000は車体前端から客室まで1870mmしかない。よく黙っているよな。

  3. 切妻だと、通過する際の風圧が強くなってしまうのでは。

  4. 京阪もここ最近(?)だと6000系だけがちらっと流線形状なフェイスにしたことがありますよ。大津線系統も600形が微妙に流線形状です。
    まぁ後続製造(改造)車はまた元の切妻型に戻りましたが。