日本版「ジャギュア」戦闘機? 三菱T-2/F-1が英仏共同開発機に激似だったワケ

1960年代後半に誕生した英仏共同開発の「ジャギュア」超音速機。ほどなくしてよく似た練習機が日本でも生まれます。その名はT-2練習機。しかもそれを基にしてF-1戦闘機も開発。なぜ似ているのか、推測します。

もしかしたら「ジャギュア」の血がT-2/F-1にも…

 国産の超音速練習機にはT-2の型式が付与されましたが、搭載エンジンとして選定されたのは、前述の「ジャギュア」開発で誕生した新型エンジン「アドーア」でした。

 筆者(白石 光:戦史研究家)が見るに、一般論ですが「同じエンジンを搭載する似たような外観の機体は、性能も似たようなものとなる」という考え方は、T-2/F-1とジャギュアの関係性にも当てはまるように思います。

「ジャギュア」のために開発された「アドーア」エンジンを、「ジャギュア」と同じ数(2基)搭載した、超音速練習機にも攻撃機にも使える機体を開発しようとした場合、ベストな性能となる設計を追求するのは当然でしょう。

 そしてこれはあくまで筆者の推測ですが、T-2/F-1の設計に際し、ジャギュアの設計がある程度は参考にされたのではないかと考えます。結果、両機が「そっくりさん」になったのではないでしょうか。

Large 20220322 01
演習で訓練用爆弾を投下するインド空軍の「ジャギュア」。英仏共同開発で世界各国に販売された同機も、2022年3月時点で運用を続けているのはインドのみとなった(画像:インド空軍)。

 日本のT-2は「ジャギュア」に遅れること3年後の1971(昭和46)年7月20日に初飛行に成功し、1974(昭和49)年8月より運用を開始します。そしてT-2をベースにした支援戦闘機F-1は、1975(昭和50)年6月3日に初飛行(このときはFS-T2改)に成功しました。

 こうして同時期に西洋と東洋で似たような外観を持つ「ジャギュア」とT-2/F-1が空を飛ぶようになったのですが、細部を見てみるとT-2/F-1のほうが「ジャギュア」よりも翼面荷重がやや大きく、主翼の構造も異なっているほか、スクランブルなど対領空侵犯措置用の要撃戦闘機としても運用されるF-1に対して、純粋に対地対艦攻撃機としてのみ運用される「ジャギュア」では、火器管制装置やレーダーの性能に差があるなど、数多くの相違点も見出せます。

 結局、「ジャギュア」とT-2/F-1、この両者は類似性こそあるものの、性能的には差があり、いうなれば「偶然」「他人の空似」に近しい関係ともいえそうです。しかしそうであれば、既述の「設計をある程度参考にした」という推測と矛盾してしまうのが、悩ましいところです。

 なお、「ジャギュア」もT-2(F-1)もすでに初飛行から半世紀以上が経ち、両機とも母国からは退役しています。残るはインドがライセンス生産した「ジャギュア」のみですが、同国も今以上のアップグレード化は行わない予定で、同じく国内でライセンス生産するスホーイSu-30MKIに置き換え退役させるとしています。

【了】

【主翼上側にミサイル!?】様々なシーンの「ジャギュア」をイッキ見

Writer:

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

最新記事

コメント

5件のコメント

  1. 「同じエンジンを搭載する似たような外観の機体は、性能も似たようなものとなる」そんな一般論があったんですか?乱暴な考え方ですね。エンジン推力と用途と言うのなら分かりますが。

  2. 分かる人は分かりますが、

    影響を受けた機体は、アメリカ製のマグダネル・ダグラスF4Eです。

    主翼から、後部の垂直尾翼と水平尾翼の垂れ下がり方から分かります。

    ただ、エンジンがパワーが無いので細く小さなボディと薄く小さなF104の様な主翼を機体上部から出したので、尾翼を傾けて取り付ける必要は無かった様ですが、全く意味が無かった訳でも無いらしいです。

    そもそも、ビゲン、グリペン、ユーロファイターの様なデルタ翼デザインがF2の時に、表に出てきましたがパワーが無い当時の国産エンジンを効率的に使うにはデルタ翼が良かったと言う話なのですが、

    構想自体はF1開発時の時には有りました。

    ただ、翼端失速などの技術・研究が日本は遅れていましたからF2の時にすらデルタ翼機の国際化は断念されています。

    F2が開発にアメリカがシャシャリ出たと言う話はネットに有りがちなデマで、

    既にスクラップになってもおかしく無いF1に変わるFSX計画を基礎研究からやるには時間と予算が足りず、アメリカに技術協力をしてもらっています。

    本題の、ジャガーとF1ですが全く関係無いと言うのが昔から定説です。

  3. 少し訂正、

    F4Eは、マグダネル・ダグラスと書きましたが、

    マグドネル・エアクラフトが正しい様です。

  4. う~ん、同じエンジン積んでるから同じ形状というのは、無理すぎないかな。

    例えば、グリペンとスーパーホーネットは同じ系列のエンジン積んでるけど、同じ形状かと言われると…

    F1の開発記事とか以前、このWebで見たような気がする、その時は参考程度の情報でという話だったような。

  5. 仕事で出かけたSNECMAで昼食時に雑談となり、うち(SNECMAグループ)のエンジンがどの飛行機に搭載されているかという話になった

    自分は「日本のF-1やT-2にもアドアエンジンが乗ってますね」と言ったらフランス人め「ああF-1、ジャパニーズジャギュアですね」と言いやがった

    他にもF-2のことを「あれって結局F-16Jでしょう?」とも言ってたからなあ

記事ランキング

  1. ロシア軍の戦闘機が「真正面から撃破される瞬間」を捉えた映像が公開 ドローンの突入を防げず
  2. 「USB挿しっぱ」でクルマが“故障”する? 三菱公式の投稿にSNS騒然 「一体ナゼ?」「これマジで起きるよ」
  3. 「海自最大の護衛艦」と「世界最大級の軍艦」が洋上で並んだ! 圧巻の編隊航行を上空から捉えたショットが公開
  4. 片山さつき大臣「実態調査はじめます」 街のクルマ屋の「保険代理店打ち切り」問題に新局面 ビッグモーター事件の余波に再び切り込む!
  5. 海自艦がロシア海軍の「超静かな潜水艦」を確認!浮上航行する姿を捉えた画像を防衛省が公開
  1. 家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”
  2. ETCの手前で「ガシャン!」高速入口に吊るされた「黄色い鎖」の正体は? 傷つく覚悟で“あえてぶつける”超アナログな理由
  3. ロシア軍の爆撃機が「真っ逆さまに墜落」 地上に激突する瞬間を捉えた映像が公開 “巨大な黒煙”が立ち上る
  4. 航行中の護衛艦「かが」の周辺に「巨大な海洋生物」が出現! 艦艇勤務ならではの光景を海自公式が公開
  5. “まるで高速”な無料バイパス「全線4車線化」へ変貌開始! 一部の上下線分離まもなく 対面通行を解消 国道8号