「SE車はやや貧弱」だ? 小田急ロマンスカー展望車の元祖「NSE」 ライバルにどう挑んだか
一畑電車でクロスシートが現役
乗り心地も改善されました。台車に小田急初となる空気ばね台車を採用。座席は、座席間隔こそ970mmになったものの(3000形は1000mm)、背もたれの高さなどが改善され、座り心地は向上しています。なお、低重心化のために床下に冷房装置を搭載したのですが、これは上手くいかず、1966(昭和41)年から天井冷房装置に換装し、1977(昭和52)年より増設しています。
3100形は7編成77両が製造され、箱根特急を中心に活躍しました。1980(昭和55)年に7000形「LSE」が登場したことで運用数に余裕ができ、1983(昭和58)年より床下機器を更新。また、1984(昭和59)年から1988(昭和63)年にかけて、アクリル板だった愛称表示器を電動字幕式に変更したほか、内装のリニューアル、売店の拡大、側窓の強化複層ガラス換装といった近代化改装を行っています。
1996(平成8)年、30000形「EXE」の導入で廃車が始まりますが、翌年1編成が、小田急開業70周年を記念したイベント車両「ゆめ70」に改装されます。
「ゆめ70」は、先頭車両を展望室以外はラウンジスペースとするなど豪華な内装で、団体専用列車や臨時列車で活躍しました。
1999(平成11)年、3100形は「あしがら80号」を最後に定期運行を終了します。「ゆめ70」は残されましたが、側扉が手動式であることが運行上のネックとなり、2000(平成12)年に引退しました。
現在は「ロマンスカーミュージアム」と、開成駅(神奈川県開成町)東口にある「開成駅前第2公園」に保存車両があるほか、新宿歴史博物館にも3100形の座席や扉、運転席が保存されています。
なお、島根県東部の私鉄 一畑電車の急行形5000系電車で、往年の3100形を感じられます。なんと2人掛け回転式クロスシートに3100形のものが使われており、ゆったりとした座り心地を体験できるのです。
【了】
Writer: 安藤昌季(乗りものライター)
ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。
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