日本が誇る飛行艇「US-2」なぜ空中消火に使わない? 過去にはテストまでしたのに… “最大の壁”とは
山林火災が多発する季節。海外では飛行艇や改造飛行機が空中消火で活躍しています。一方で、なぜ日本の飛行艇「US-2」は消防機として使われないのでしょうか。そこには日本の山火事に潜む “特殊すぎる事情” が影響していました。
日本特有の集落事情も
人為的な失火が原因ということは、火災が発生する山林も人家に近い場合が多く、いわゆる「里山」と呼ばれるような場所で起きているのが、日本の山林火災の特徴といえるでしょう。2025年に発生した大船渡市の山林火災も、集落内の火災が山林へと燃え広がったものでした。
燃えている山林と人家や農地が近接している状況は、大型消防機による空中消火を難しくさせます。
ただでさえ数百km/hで飛行している機体から、積載する消火剤が毎秒4~10t近い勢いで投下されると、地上に落ちる際の衝撃はかなりのものになります。民家に当たると屋根を破壊する危険がありますし、田畑の作物にも悪影響を与えるでしょう。
そのうえ小回りも効きませんから、近接する集落を避けつつ消火をすることも困難です。大型の消防機は、広範囲に広がった山林火災において大きな消火能力を発揮しますが、日本では集落が近いぶん、性能が過剰になってしまうのです。
集落近くで発生することが多い日本の山林火災では、地上から消防車がホースを繋いで消火できるという利点があります。地域外の消防隊にも応援を仰ぎ、人海戦術で消火活動をするのが実情に即しているのかもしれません。
なお、空中消火については、ヘリコプターに吊るした大型のバケツ(製造メーカーの名前から「バンビバケット」とも)で、ピンポイントに狙って消火する方が向いているといえるでしょう。
大規模な火災の上空では強烈な上昇気流が発生し、ヘリコプターがホバリングしながら飛行するのは難しいのですが、防災・消防ヘリや自衛隊のパイロットたちの高い操縦技術で空中消火活動を実現しています。
こうした理由から、日本では、独自開発した高性能な飛行艇があるにもかかわらず、国産の消防機は生まれていないのです。
Writer: 咲村珠樹(ライター・カメラマン)
ゲーム誌の編集を経て独立。航空宇宙、鉄道、ミリタリーを中心としつつ、近代建築、民俗学(宮崎民俗学会員)、アニメの分野でも活動する。2019年にシリーズが終了したレッドブル・エアレースでは公式ガイドブックを担当し、競技面をはじめ機体構造の考察など、造詣の深さにおいては日本屈指。





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