驚異的な“スピード”!! ステルス戦闘機「F-35」が達成した性能以外の偉業とは コスパ最良が日本を苦しめる?
性能が大して変わらないならF-35で十分じゃない?
なお、日本もF-35Aを導入していますが、我が国は円安の影響もあり価格低下を実感しにくい状況です。来年度(2025年度)概算要求ではF-35A 8機、総額で1249億円を計上しており、1機あたりの平均価格は156億円(1億400万ドル)となります。
特に影響が大きいのは、元々高額である短距離離陸・垂直着陸型のF-35Bです。来年度概算要求では3機で608億円が盛り込まれていますが、1機あたりの価格は203億円にも達します。これは予備のエンジンなど機体以外の費用も含まれた価格ですが、それを考慮してもかなり高くついていることがわかります。
皮肉なことに、1機あたり1億5000万ドルであったシステム開発実証機の生産時は円高であったことから、当時は1ドル=80円程度であり120億円程度で済みました。その頃と比べると日本が取得するF-35の価格はかなり上昇しています。とはいえ、これはF-35自体の問題ではなく経済状況によるものと言えます。
日本ではF-35の調達価格低下の恩恵が十分に受けられない一方で、安価かつ高性能な戦闘機としてF-35導入国が増えることはほぼ確実です。また、既存導入国による追加発注も期待されます。
現在、日本を含む各国では新型戦闘機の開発が進行中です。たとえば日本とイギリス、イタリアの3か国が共同開発している「GCAP」や、フランスとドイツ、スペイン共同開発の「FCAS」などが挙げられます。各国は自国の産業を育成するため、こういったプロジェクトを是が非でも成功させたいところですが、これら新機種の生産数は数百機がせいぜいであり、数千機が確定しているF-35と比べると一桁少ないのは間違いないでしょう。
F-35はあらゆるミッションを高いパフォーマンスで遂行可能であり、圧倒的なコスト競争力を有しています。そのため、なぜF-35以上に高額となることが確実視されるこれら新型機の開発が必要なのか、プロジェクトが進展するにつれ、各国でその意義を問う声が上がるかもしれません。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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