東武の新SL列車「大樹」特徴は? 周遊、国鉄、復興…変わる日光・鬼怒川エリア

東武鉄道が2017年8月から、日光・鬼怒川エリアで新たに運行するSL列車「大樹」。多くのSL列車があるなか、「大樹」はどんな特徴を持っているのでしょうか。「アトラクション」「国鉄」「復興」などがキーワードになりそうです。

東武鉄道SL列車を運行する3つの目的とは? 福島の支援も

 東武鉄道が2017年8月10日(木)より、同社が路線観光施設などを持つ栃木県の日光・鬼怒川エリアで運行を開始する予定の、新しいSL列車「大樹(たいじゅ)」。5月2日(火)に拠点の下今市機関区(栃木県日光市)が開設されるなど、その姿が次第に明らかになってきました。

下今市機関区の開設式。東武の根津社長や斎藤日光市長ら出席した(2017年5月2日、恵 知仁撮影)。

 SL列車を復活させる目的について東武鉄道は、「東武博物館」を有している同社の特性を生かした「鉄道産業文化遺産の保存と活用」、SL運行という鉄道事業者ならではの施策による「日光・鬼怒川エリアの活性化」、そして「東北復興支援の一助」になることを挙げます。

「日光・鬼怒川エリアから野岩鉄道や会津鉄道を経由し、会津若松まで行くことができます。そうしたルートを活用して、福島の復興にも貢献したいと考えております」(東武鉄道、根津嘉澄社長)

 また列車名の「大樹」には、日光東照宮から連想される「将軍」の別称、尊称、また634mと自立式電波塔として世界一の高さを誇る東武グループのタワー「東京スカイツリー」を想起させることから、力強く大きく育ってほしいとの思いを込めたそうです。

「大樹」は日光・鬼怒川エリアのアトラクション?

 SL列車「大樹」の特徴のひとつは、「周遊」しやすいことです。

 運行区間は東武鬼怒川線の下今市~鬼怒川温泉間の12.4kmで、途中、7月22日(土)に開業予定の東武ワールドスクエアに停車。所要時間は片道およそ35分です。運行区間は栃木県日光市内で完結。SL列車に長時間乗車して別の地域へ行く、というのではなく、「日光・鬼怒川エリアの周遊観光」に組み込みやすい運行体系になっています。

下今市機関区の開設式で書道パフォーマンスを行った涼 風花さん。
「美人過ぎる書道家」とも呼ばれる涼 風花さんは日光観光大使。
SL「大樹」の14系車両に掲示された運行区間などの案内。

 全車指定席で、乗車には運賃のほか「SL座席指定料金」(大人750円、小児380円)が必要ですが、運賃(通常大人250円)とあわせて必要な代金は1000円。時間的にも金額的にも、「日光・鬼怒川エリアのアトラクション」的な楽しみかたができるでしょう。

 2017年度は土休日を中心に98日間の運転が予定されており、各日、下今市~鬼怒川温泉間を1日3往復します(運行初日の8月10日は4~6号のみ運転)。

「SL座席指定料金」は東武線各駅(駅員無配置駅、一部の駅を除く)で、各運転日の1か月前午前9時からの発売です。東武トップツアーズや主要行会社などでも扱われます。

全国の鉄道会社が協力

「全国の鉄道会社の協力」で運行されるのも特徴です。目的のひとつである「鉄道産業文化遺産の保存と活用」などに賛同した各社から車両の貸与、譲渡を受け、SL列車「大樹」は運行されます。蒸気機関車のC11形207号機は元・JR北海道、客車の14系と12系は元・JR四国、DE10形ディーゼル機関車1099号機は元・JR東日本、ヨ8000形車掌車は元・JR貨物と元・JR西日本です。

JR四国からやって来た14系客車。
「広島」の表記があるヨ8000形車掌車。
長門市駅にあった転車台で向きを変えるC11形とヨ8000形。

 また、同じ場所で一回転することによって車両の向きを変える「転車台」もJR西日本から往時、実際に使われていたものの譲渡を受けています。このたび下今市駅に設置された転車台は山陰本線長門市駅(山口県長門市)、鬼怒川温泉駅に設置された転車台は芸備線三次駅(広島県三次市)から移設されました。

 乗務員や検修要員の養成についても、JR北海道や秩父鉄道大井川鐵道、真岡鐵道から協力を得ています。

「大樹」の編成は、「SL(先頭)+車掌車+客車3両+ディーゼル機関車」。座席定員はおよそ200です。

東武のSL列車は「国鉄」も特徴?

 このたび各社から譲渡された車両は、すべて国鉄時代以前に製造されたものです。客車の14系座席車は1972(昭和47)年から製造され、特急列車夜行列車などとして使われました。

国鉄時代を強く感じさせる14系客車の車内。
トイレは和式から洋式になった。
SL、車掌車、客車、ディーゼル機関車が連結する「大樹」。後ろに最新特急「リバティ」も。

 これら車両は東武鉄道によると、「鉄道産業文化遺産の保存と活用」という目的から、座席やカーテンなどを新製当時のデザインに極力近づけるとのこと。「国鉄時代」を感じられるのも、「大樹」のポイントでしょう。ただお手洗いについては、洋式に改造されています。

 また東武鉄道ではSL列車「大樹」の運行開始にあわせて、日光・鬼怒川地区限定で「昭和レトロ・ノスタルジー」の制服を導入する、発着駅の下今市駅舎をかつてのSLが走っていた時代を彷彿とさせるものにする、といった“演出”も実施。下今市駅では、SLを間近で見学できるエリアも整備される予定です。

 東武鉄道は「東京スカイツリー」や、同社が2017年3月に導入した26年ぶりの新型特急「リバティ」がもつ「先進性」と、SLが走る日光・鬼怒川地区の「昭和レトロ・ノスタルジー」を同時に感じてもらうことで、沿線を訪れる人々に「時空を越える旅」を提供していくとしています。

【了】

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Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道ライター、イラストレーター。「鉄道」や「旅」に関する執筆活動や絵本の制作を行っているほか、鉄道車両のデザインにも携わる。子供の頃からの旅鉄&撮り鉄で、日本国内の鉄道はJR・私鉄の全線に乗車済み。完乗駅はJRが稚内で、私鉄が間藤。メインは「鉄道」だが、基本的に「乗りもの」好き。

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コメント

1件のコメント

  1. SLが東武にも走りますね。特に喜ばしいのは、12,14系客車の塗装が(勿論ディーゼル機関車も含めて)旧国鉄色のまま、細かいロゴマーク等、文字に至るまで、内装、シート等そのまま使われていたのにはびっくり、うれしいやら、驚き、感動。東武鉄道には脱帽です。絶対に乗ります。東武鉄道のスタッフの皆さんありがとうございます。